「5Gネットワークを構築するうえで、大変有効なソリューション。すでにいくつもの通信事業者から引き合いがあり、『早く持ってきて欲しい』と言われている」
光トランシーバーベンダー大手の米Finisar社は今年2月、新製品「10G Tunable BiDi SFP+ Transceiver」(以下、10G T-BiDi TRX)の量産出荷を開始した。同製品は、Finisar社が独自開発した光多重伝送技術「D2WDM」に対応した初の光トランシーバーで、製品開発を担当したマッシモ・ディ・ブラージオ氏と国内販売代理店のマクニカは、早くも強い手応えを感じている。
(左から)マクニカの大鐘翔氏、Finisar Japanの生駒悦男氏、米Finisarのマッシモ・ディ・ブラージオ氏、
Finisar Japanの石井傑氏、マクニカの佐藤元紀氏
上り/下りを光1本でD2WDM(Dual-band Bidirectional DWDM)は、波長の異なる多数の光信号を光ファイバー上に重ね合わせて送れるDWDMを、独自に拡張した光多重伝送技術だ。最大の特徴は、1芯の光ファイバー1本で、双方向伝送を実現できる点にある。
DWDMでは一般的に「上り」と「下り」で別々の光ファイバーケーブルを用いる。つまり、2本分のダークファイバー料金やMux/Demux(波長合分波モジュール)のコストなどがかかる。これに対して、D2WDMであれば、1本分で済むのだ。
上り/下りを1本で送れるDWDMは他にもあるが、D2WDMが優れているのは、それを低コストで実現できることだという。DWDMで広く使われている100GHz間隔のフィルターを搭載した安価なMux/Demuxがそのまま使えるためだ。
他社に先駆けてこうした技術を実用化できた理由について、Finisar Japanで営業部長を務める石井傑氏はこう語る。
「光トランシーバーの波長可変機能の精度が高く、2本の光信号を正確に100GHz間隔のフィルターの中に収めることができた」
DWDMでは、例えば長距離伝送能力の優れるCバンド(191.5~196THz)に、100GHz間隔で伝送チャネルを設けて多重伝送する。D2WDMの場合、この100GHz間隔の中に50GHz間隔で上り/下りの信号を正確に収め、双方向通信を行う。
10G T-BiDi TRXは、Cバンドの40チャネルを選択して10Gbpsの双方向通信が可能。40個の10G T-BiDi TRXを対向で用いることにより、Mux/Demuxの先は光ファイバー1本で400Gbpsの大容量双方向通信が実現できる(図表1)。最大伝送距離は40kmだ。
図表1 D2WDM(波長可変1芯双方向波長分割多重方式)のイメージ