サスティナブルな運用を目指してこれで安定した接続を提供できるようになったが、次に悩まされたのがトラブル対応だった。WISS 2014では学生アルバイトの作業ミスに加え、たまたま発覚したVyOSのバグに悩まされ、前日はほぼ徹夜。綱渡りでの運用になってしまった。定常運用の次の課題として、なるべく負荷を減らした「サスティナブル」な運用にしたいと考えた。
そこで、トラブルが発生した際に疑うべき個所を減らすため、ルータをコア(VyOSの1台)とエッジ(RTX1200とRTX1210の2台)の構成にした。
この時期、もう1つの問題として無線アクセスポイントの性能にも悩まされていた。コンシューマー向けモデルでは接続が安定せず、設計通りの台数が接続できなくなるトラブルが発生していた。ヤマハ 研究開発統括部 第1研究開発部 サービスプラットフォームグループ 主事の原貴洋氏は「私がネットワーク担当になった時、無線LANに絶望し有線接続のみの運営に決まりかけたが、なんとか無線LAN提供にコダワリたかった」と振り返る。
問題解消に向けて検証したのがヤマハの「WLX302」だ。WISS 2016のクロージングでは参加者全員に呼び掛け、あえて想定以上の負荷をかけて問題なく接続できることを確認し、翌年から「WLX402」で無線LAN接続を提供することにした。
近年、SSL化が進み、キャッシュによって得られる効果が限定的になっていたことも考慮し、プロキシを持たないスイッチの採用を決断。2018年にはL3スイッチの「SWX3100-10G」を用いてセグメントを分割した。
「ソフトウェアルータによるネットワーク構成の模索に目途がついたところで、ちょうど良い規模感のSWX3100-10Gが出てくれた」と、WISS 2014からネットワーク担当を担ってきた明星大学 情報学部 情報学科准教授の丸山一貴氏は語る。
図表 WISS 2018のネットワーク構成
ネットワーク担当の負荷も軽減試行錯誤を重ねてきた結果、WISSのネットワークはオールヤマハ、無線利用中心になったが、「来場者の約90%が問題なかったとアンケートに回答している」(原氏)という。
ネットワーク担当の負荷も下がった。コマンドラインではなくGUIで各種設定を行えるようになった上、無線LANアクセスポイントの設定もコピーだけで済む。コンパクトなアプライアンスで構築できることもメリットだ。VyOSを搭載したソフトウェアルータはタワー型サーバで稼動しており持ち運ぶのも一苦労だった。
WISSネットワーク担当には新たなメンバーが加わり、2019年に向けた検討を進めている。「今の構成を踏襲しつつさらにシンプルにし、またIPv6も導入したい」(原氏)。今後も、インタラクティブなシステムのあり方について活発に議論していく基盤として、コストパフォーマンスにすぐれ、安定したネットワークを提供するヤマハ製品に期待している。