”現場力”向上へAI/IoTを活用 ―― NTT東日本が障害対策の取り組みを紹介

NTT東日本は2007年度から、電気通信設備の保全に必要なスキルの向上と継承を目的とした「現場力向上フォーラム」を毎年開催している。設備保守に携わる社員が技能を競い合う競技会を実施するほか、最新技術を活用した保守の高度化に向けた取り組みも展示。2019年1月16日に行われた12回目の開催では、AI/IoTを活用したデモも紹介された。

現場力向上フォーラムは、NTT東日本の社員および協力会社が参加するイベントで、電気通信設備の保全に要するスキルの継承とノウハウの水平展開を目的としている。毎年、各支店から選抜された社員による技能競技会が行われ、今回は西日本代表を含む30チームが故障修理・設備保全のスキルを競い合った。

競技は、フレッツ光ネクストを利用しているユーザー宅を模した環境で行われ、120分の時間内に通信ケーブルおよびユーザー宅内の故障箇所の特定と復旧作業を実施するというもの。2人1組で故障修理作業や端末の設定等を行い、審査員が作業の安全性や施工技術の正確性、お客様対応の丁寧さ、迅速性などを審査する。


技能競技会の様子。黄色のビブスを付けた2人が競技者で、
赤・青ビブスの審査員が作業内容を厳しくチェックする

近年、台風による強風で光ケーブルが断線する事故が多く発生していることを受けて、今回は断線したケーブルの張り替えと、それに伴う宅内機器(ルーターやビジネスホン等)の設定、周辺設備の健全性の確認などを行った。

また、前年までは当日に競技の内容を発表していたが、今回は初めて事前に公開した。競技を行う社員だけでなく、支店のメンバーが皆で対処法を考えたり、独自の工夫を凝らしたうえで競技に臨めるようにすることで、支店内のコミュニケーション活性化にもつながったという。なかには、遠隔から競技者を支援するためのツールを独自に作って本番に臨んだチームもあるそうだ。

競技に参加する社員は入社3年から5年程度の若手が中心で、各支社の“エース級”が並ぶ。年に一度のこの競技会は、若手社員のモチベーションアップにもつながっているという。

AIで故障受付を自動化

フォーラム会場では、設備保全業務の高度化に向けた取り組みに関する展示やデモも披露された。そのうち2つを紹介しよう。

1つが、AIを活用した「故障フロント受付業務の自動化」のデモだ。

NTT東日本は、「電話がつながらない」「インターネットが使えない」といったトラブルが発生した場合の故障受付番号として「113」を設けている。この電話での故障受付業務を、音声認識機能などのAI技術を活用して自動化するのが目的だ。

現在、113の故障受付は、昼間は人間のオペレータが対応し、夜間は録音による受付を行っている。オペレータが直接応対する場合には状等を詳しく聞き、故障箇所を特定しているが、録音の場合は、ユーザーの名前や連絡先の電話番号といった基本的な事項すら欠けているケースがあるという。

デモでは、音声認識機能などを備えるAIが電話応対を行い、氏名や連絡先、発生している故障の症状を問診し、ナレッジサーバーから回答を検索、音声合成によって回答するという一連の流れが実演された(下は応答の内容をテキスト化したもの)。曖昧な回答についてAIが聞き直し、さらにユーザーの申告内容をテキスト化することで、オペレータの業務負荷も軽減できるという。


ユーザーの申告内容から「電話故障」であることを判定

NTT東日本では2019年3月から商用トライアルを開始し、現在は録音で対応している夜間帯の故障受付から導入する予定だ。オペレータの声も取り入れながら、徐々に適用範囲を広げていく計画だという。また、将来的には、故障切り分けの自動化を目標に研究を進める。

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