マルチクラウドの準備を始めよう!――NW・セキュリティ見直しの勘所とは?

パブリッククラウドの普及によって、企業は新たな課題に直面している。パフォーマンスの劣化、セキュリティリスクの増大、運用管理の複雑化だ。これらの悩みを一掃するためのポイントを整理する。

宛先・用途ごとに“専用道路”用途ごとに回線を分けるこの方法は、特に音声通話やビデオ会議等のリアルタイムコミュニケーション(RTC)サービスを利用する場合に有効だ。RTCサービスは遅延の影響を受けやすいため、図表3のように“専用道路”を設けると品質が安定しやすい。また、経由するネットワーク機器数ができるだけ少なくなるよう、設計を見直すことも必要だ。

なお、RTCサービスではUDP通信を利用することが多いので、FWの設定を変更しUDP通信を許可することも忘れてはならない。

図表3 音声/ビデオ会議の品質確保
図表3 音声/ビデオ会議の品質確保

運用面のメリットもある。用途によって経路と通過する設備が分かれるため、障害時の切り分けも容易になる。クラウドの利用量が増減した場合にも、ADCと専用回線の帯域を変更するだけでよい。他の業務システムに影響を与えずに済み、さらにクラウドの費用対効果も測りやすくなる。

WAN構成の“大改修”もさて、上記はあくまで“出口”をセンターに集中させるネットワーク構成を踏襲しながら行う対策だ。

一方、クラウド宛の通信を各拠点から直接インターネットに出す「ローカルブレイクアウト」も有効な対策になる。センター拠点の負荷軽減に加えて、WAN回線の圧迫も解消することが可能だ。パフォーマンスの改善に加えて、WANコストの低減にもつながることから、企業ネットワークの構成を大きく見直す企業も増えつつある。

ただし、すべてのインターネット通信をローカルブレイクアウトさせると、各拠点にFW/プロキシが必要になるため、設備/運用コストが高くつく。そこで、通常のインターネット通信は従来通りとし、クラウド向けの通信だけをブレイクアウトさせればコストを抑えることが可能だ。例えば、NECはVPNルーターの「UNIVERGE IXルーター」でこうした振り分けを可能にしている。宛先ごとに通信経路を振り分けられるSD-WANもこの用途に使える。

月刊テレコミュニケーション2018年4月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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