2000年代前半のVoIP草創期、IP電話サービス事業者の先駆けとして、日本の通信業界関係者からも大きな注目を浴びた米Vonage社――。同社が初の日本拠点を昨年開設した。
といっても、まず狙うのはIP電話サービスや、その発展形としてVonage社が近年注力してきた企業向けユニファイドコミュニケーション(UC)の市場ではない。
狙うのは、CPaaS(Communication Platform as a Service)と同社が呼ぶ「Nexmo」の拡販だ。
Nexmoは、Vonage社が2016年に買収したNexmo社が始めたサービス。モバイルアプリやWebサイトなどに、電話やSMSを活用した機能を組み込めるAPIプラットフォームだ。
「スタートアップ企業などは、いろいろなAPIを組み合わせて、1つのソリューションを作り上げる。APIはデジタルエコノミーのビルディングブロックだ」。日本のカントリーダイレクターを務める楠本博茂氏はこう語るが、NexmoのAPIを使うと、一体どんなサービスが作れるのか。
Vonage 日本担当 カントリーダイレクター 楠本博茂氏
ライドシェアやIoTに活用その一例として楠本氏が挙げるのは、ライドシェアなどのシェアリングサービスによく使われているという「代理電話」だ。
ドライバーとユーザーがお互いの電話番号を知ることなく、電話で通話できる機能をアプリケーションに組み込める。ユーザーのプライバシーを保護できるのに加え、ライドシェア事業者からすると、ドライバーとユーザーの直接取引を防ぐことができる。
この代理電話の機能は、シェアリングサービスのほか、法律相談や不動産業などでも利用されているそうだ。前者の場合は相談者のプライバシー保護、後者は営業担当者が転職時に自社顧客を持ち出さないために活用している。
登録された携帯電話番号にSMSでパスコードを送信する「二要素認証」の機能も提供している。認証システム自体もNexmoに用意しており、「お客様のアカウントシステムとNexmoの認証システムの両方を同時にハックするのはほぼ不可能。そのためセキュリティ面でのメリットもある」という。さらに、何らかの理由でSMSが届かない場合に自動で電話をかけ、合成音声でパスコードを伝えることも可能で、これは「他社にはない機能」(楠本氏)だという。
このほか、マーケティング目的でのSMSや合成音声電話の送信/発信とIVRによる応答など、SMSと電話を利用した様々な機能をAPIで提供しているNexmo。グローバルでサービスを展開しており、年間のAPIコール数は60億超、登録されている開発者の数は37万以上に上るという。同様のサービスは他にもあるが、到達率や遅延時間など、「グローバルで非常に高い品質を維持している」のが強みと楠本氏は語る。
さて、このように実績豊富なNexmoだが、日本では海外での事例が多いスタートアップ系や不動産業などに加えて、IoTも重要なターゲットにするという。
「日本には製造業が多いが、生産ラインの状態を常にモニターし、何か問題が起こったら、Nexmoを活用してアラートを送るといった使い方が考えられる」
楠本氏によれば、「SMSの認識率は大変高く95%。しかも90秒以内に見ると言われている」。こうした特徴を活かし、IoTでのクリティカルなアラートの送信などの用途も開拓していきたいとのことだ。