――昨年10月の社長就任から間もないですが、マルチクラウドとDevOpsの2つのキーワードを挙げて、デジタルトランスフォーメーションの時代にF5が進むべき方向性を示しました。
権田 UberやAirbnb、Netflixなど、ここ数年、デジタルのパワーを本当に強く感じます。では、デジタルトランスフォーメーションは、何によって実現されているのか。それはもちろんソフトウェアですが、我々が着目しているのは、そのソフトウェアがどこで動いているかです。
これまでF5が主に対象としてきたのは、オンプレミスのミッションクリティカルなアプリケーションでした。しかし、デジタルトランスフォーメーションの波を考えると、今後は当然、マルチクラウド化がダイナミックに進んでいくでしょう。
また、それを支えるのがDevOpsです。従来のウォーターフォールからアジャイルな形へと開発手法が変わり、デジタルトランスフォーメーションを実現していきます。そこで、マルチクラウドとDevOpsをこれからのF5のストラテジーの軸と捉えているのです。
――そうした戦略の背景には、既存のハードウェア中心のビジネスに対する危機感もあるのですか。
権田 「ハードウェアビジネスがなくなる」とはよく言いますが、そう簡単にはなくならないでしょう。
実際、ハードウェアビジネスはずっと右肩上がりで伸びており、F5は昨年度、過去最高の売上を記録できました。ただし、5年後、10年後も今と同じような成長率を確保できるかといえば、ここは守りの領域です。ハードウェアの機能強化はもちろん今後も粛々と進めますが、時代が変わってきているのだから、我々も変わらなければならない。新しいマーケットを作る必要があります。
――12月に開催した事業戦略説明会では「大きな危機感」という言葉も使われましたが、そこでソフトウェアビジネスに注力するわけですね。
権田 過去を振り返れば、多くのリーダー企業が、次の時代にリーダーになることができませんでした。好調な既存ビジネスに甘んじて危機感を抱かなければ、気付いたときには「もう手遅れ」となります。