【連載】ミリ波のチカラ -超高速通信がもたらす新しい体験- の目次はこちら
現在の商用5GネットワークではEN-DC(E-UTRA NR Dual Connectivity)および、NR-DC(NR Dual Connectivity)構成が主流であり、どちらも複数の周波数帯(Sub6やミリ波帯)を同時使用するデュアル接続方式である。EN-DCは4G(LTE)と5G(NR)、NR-DCはSub6とミリ波などの5G同士の連携により、高速通信と安定性を両立している(図表1)。
図表1 EN-DC/NR-DCとミリ波スタンドアローンの構成

しかし、このようなデュアル接続構成では、複数帯域にまたがるエリア設計と無線リソースの最適化が必要となり、特にFWA(Fixed WirelessAccess)のような限定エリアでの展開では、コストや構成の複雑さが課題とされていた。
さらに、ミリ波以外の周波数帯(Sub6など)との組み合わせで運用されるため、データの流れを各帯域に適切に振り分ける制御が必要となり、特に上り通信(Uplink:UL)ではミリ波の伝搬特性が厳しく、端末の送信出力の制限もあり、容量の小さい他の帯域との最適な連携制御が求められる。端的に言うと、通信制御を実施するアンカーバンドの通信状況により、ミリ波帯の通信安定性が決まってしまうということになる。
このような背景のもと、ソフトバンクはミリ波帯のみを用いたスタンドアローン(SA)構成による5G商用ネットワークを構築し、他の帯域に依存しないミリ波単独での安定した高速通信を実現した(2025年10月28日報道発表:ニュースリリース)。この構成では、デュアル接続構成よりネットワーク設計がシンプルとなり、Sub6帯域間の干渉や重複配置を考慮する必要がないため、用途に応じた柔軟かつ効率的なエリア展開が可能であることが大きな特徴である。
FWA用CPEとWi-Fi構成
このミリ波SA構成によるFWAの性能を検証した。本実証実験には京セラが開発した、ミリ波SAに対応したCPE(Customer Premises Equipment)を使用した(図表2)。
図表2 京セラ製CPE の仕様

本CPEの主な特徴は以下の通りである。
(1)高利得アンテナ搭載
(2)ミリ波SA対応
(3)屋外設置対応
本CPEは一般的なスマートフォンと比較して、高利得のアンテナを備えており、これを屋外設置とすることにより、LOS(見通し)環境を確保し、広いカバレッジと通信速度の向上を図っている。これにより、ミリ波5G通信の強みを最大限に活かしたFWAを構築できる。
具体的には、32個のパッチアンテナで利得を約18dBiと大きく稼ぐことで、ミリ波帯の厳しい伝搬特性を改善させている。また、従来のスマートフォンと比べ、上り通信もEIRP※+43dBmとすることでより安定させることができる。
※EIRP:Equivalent Isotropically Radiated Power。実効等方放射電力、または等価等方放射電力とも言う。送信機の能力を示す指標の1つ。等方性アンテナで指向性アンテナと同等の放射強度を出すための電力のこと
本CPEの設置例を図表3に示す。ベランダ等の屋外にミリ波通信を行うCPEを設置し、CPEからLANケーブルでPSE(Power Supply Equipment)を介してWi-Fiルーターと電源を接続するだけである。
図表3 CPE 設置例














