百花繚乱となった、我が国スマートスピーカー市場2017年秋、AIを内蔵したスマートスピーカーが、我が国の市場にも続々と登場し始めました。
すでにグーグルの「Google Home」、アマゾンの「Amazon Echo」、LINEの「Clova WAVE」、ソニーの「LF-S50G」などが販売開始されています。今後も、アップルをはじめ、内外の様々な企業からスマートスピーカーが発売される予定です。
まさに、百花繚乱といった状況です。
これらのスマートスピーカーは、口頭で問いかけたり命令したりすると、「質問に答えてくれる」「音楽を流してくれる」などして、私たちの生活をより便利にしてくれます。
しかし、スマートスピーカーの販売は、各社の真の狙いに対する第一歩に過ぎません。図表1をご覧ください。
図表1 スマートホーム市場をめぐる海外プレーヤーの動向
出典:経済産業省 産業構造審議会 新産業構造部会 第12回(平成28年12月22日)配布資料より抜粋http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shin_sangyoukouzou/pdf/012_06_01.pdf
これは、経済産業省の産業構造審議会(部会)で配布された資料の一部であり、「AI×暮らしを豊かにする機器・サービス」の章で説明されている、海外のプレーヤーの動向です。
ここでは、グーグル、アマゾン、アップル、サムスンの4社の状況が記載されていますが、いずれも「宅内IoT」あるいは「スマートホーム」に狙いを定めている様子がうかがえます。
彼らは、自社のスマートスピーカーをスマートホームのセントラルハブ、あるいは、人間とのインタフェースの標準とすることを狙っています。その結果として、スマートホーム市場における自社のプレゼンスを高めることを目論んでいるのです。
ここで、世界のスマートホーム市場の成長予測を見てみましょう。
図表2 スマートホーム市場の成長予測
出典:A.T.カーニー
https://www.atkearney.co.jp/communications-media-technology/the-battle-for-the-smart-home
コンサルティング会社のA.T.カーニーによると、2015年に140億米ドルの規模だった世界全体のスマートホーム市場は、2025年には2630億米ドル、2030年には4050億米ドルまで成長すると予測されています。ざっと40兆円以上の市場です。いかに有望視されているかが分かります。
また、図表2のグラフを見ると分かる通り、A.T.カーニーでは、利用目的(提供価値)別に、以下の5つのカテゴリに分類して市場予測しています。
(1)ホームセキュリティ
(2)エネルギーマネジメント
(3)快適&利便性
(4)健康維持と増進
(5)エンターテイメント(映像・音楽など)
上記カテゴリのうち、日本とは治安の異なる欧米では、ホームセキュリティ分野からスマートホーム市場が広がっています。
また、アメリカでは2014年に、日本より一足先に販売されたアマゾンのスマートスピーカーが4000万台以上販売された、という報道もありました。
このような状況を見ると、「日本でもこれから本格的にスマートホーム市場が立ち上がっていくのだろう」と期待する方もいるでしょう。
一方で、スマートホーム構想は、提唱されてから30年以上も経過しており、正直なところ、目新しい概念ではありません。実際、スマートホームと聞いて、「またか」と思われた方も多いはずです。
今回のスマートホーム市場への各社の参入が、我が国においても本格的な普及・定着へと続くものか見極めるためにも、まずは、スマートホーム構想のこれまでの流れを確認してみましょう。