ネットワーク監視ツールの最新トレンド――「警報装置」から「アシスト役」に進化

異常を通知するのが主な役目だったネットワーク監視ツールが大きく進化している。障害の原因や影響を分析し、復旧に必要な情報も自動的に収集。運用管理業務を下支えするアシスト役へと変貌している。

ネットワークに接続しながら業務を行うことが常態化した今、企業活動はネットワークの稼働状況に大きく依存している。一時的にでもネットワークが停止すれば、業務はストップする。クラウドへの依存度が高い企業ならなおさらだ。

このネットワークの安定稼働を支えるのが「ネットワーク監視ツール」である。スイッチやルーター等のネットワーク機器の稼働状況やトラフィックを監視して、障害や性能劣化が発生した場合に運用管理者へ通知するものだ。

「監視しない」は大きなリスクネットワーク監視ツールは、ネットワーク運用やクラウドサービスの提供を事業とする通信事業者/サービスプロバイダー、および大規模ネットワークを運用する大企業では従来から使われてきたものの、中堅中小企業にはあまり普及してこなかった。導入コストが高く、運用に高度なスキルが必要なためだ。小規模なネットワークでは、コストを抑えるために無料のフリーソフトが使われているケースも珍しくない。

だが最近は、中小規模ネットワークでもネットワーク監視ツールの導入ニーズが高まっている。監視をしない、あるいはフリーソフトで間に合わせるという選択は、企業活動を停止させかねない大きなリスクを生むからだ。

このニーズの変化を受けて、コストを抑えながら導入することが可能で、かつ運用が簡便な中小規模向けの製品が増えてきている。

一方、企業ネットワークの大規模化・複雑化が進み、運用管理者の負荷が増大していることを背景として、監視ツールの機能も進歩している。

特に注目すべきポイントは、障害の原因と影響範囲を分析する機能や、情報の収集/フィルタリングを自動化する機能が拡充されていることだ。ネットワーク監視ツールが発するアラートを受けて人が行っていた作業を、これらの機能で代行あるいはサポートすることによって運用負荷を軽減する。さらに、監視対象もサーバーやストレージ、仮想環境やクラウドへと広がり、ITインフラ全体を一元的に監視することも可能になってきている。

従来は、ネットワーク機器の異常や障害発生の通知を行う、文字通り「監視」のためのツールであったものが、最近では、ITインフラ全体の状態把握から障害検知後の対処までオペレーションを効率化するソリューションへと進化しているのだ。

本稿では(1)ネットワーク監視ツールの裾野を広げる動きと、(2)機能進化の2つの側面で、ベンダーの動きと製品トレンドを見ていく。

月刊テレコミュニケーション2017年10月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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