「約9割の企業ではスマートフォンの購入は1社に1~2台程度にとどまっている」――企業におけるスマートフォン活用の実態について、NTTドコモ法人事業部ソリューションビジネス部第一開発担当主査の遠藤健太郎氏はこう話す。
ドコモのスマートフォンといえば4月に発売した「Xperia」の印象が強いが、法人向けに関しては「HTC-Z」「BlackBerry」「HT-03A」など数年前から取り組んできた。
しかし、企業におけるスマートフォンの導入はこれまでなかなか進まなかった。従来の法人向けスマートフォンは“特殊な端末”というイメージがあり、特殊な業務で使われることが多かったからだ。まとまった台数を導入しているのはハンディターミナルなど法人専用端末の代替として使う企業がほとんど。つい最近まで、大半の企業では比較的感度の高い経営者や社内で関心のある担当者が「お試しで購入している」状況だったという。「スマートフォンをどうやって業務で活用すればいいか、お客様もなかなか理解しきれていないようだ。まとまった台数を入れて業務の中で活用していただくことを広げていくのが課題」と遠藤氏は話す。
こうした状況もXperiaやiPhoneの登場で徐々に変わりつつある。「コンシューマー市場で一般ユーザーの間に広まっているように、一般企業の間でも普及し始めている。『最近話題になっているので紹介してほしい』と言われることも多い」(遠藤氏)という。
入口を広くして勧める
スマートフォンが携帯電話と大きく違う点はオープンプラットフォームであることだ。スマートフォンの業務活用のメリットを分かりやすく説明する方法として、「PCの代わりになる」という言い方ができる。
現状、外出先ではノートPCや携帯電話でメールやスケジュールを確認している人が少なくない。しかし、ノートPCでは持ち歩くのにかさばり、携帯では使い勝手がよくなかったり画面が見づらいという問題がある。その点、スマートフォンの大きさなら持ち歩きに負担がかからず、画面サイズも見やすい。
ただ、メールやスケジュールの閲覧だけを目的としてまとまった台数のスマートフォンを導入する企業はほとんどない。そこで、ドコモではまずメールやスケジュールの閲覧をベースに、営業なら客先で折衝記録を取ったり、受発注がその場で完結するなど、「従来はノートPCでしてきたことが、スマートフォンでもできる」ことを説明するようにしているという。
また、スマートフォンは業務システムやクラウドサービスとつなぐことでさらに付加価値が生まれる。ただ、一定規模以上の企業でPCの代わりにスマートフォンを導入しようとすると、既存システムに手を加える必要が出てくる。いきなりクラウドサービスの説明から入ったのでは相手に理解してもらえないこともある。「(導入には)ステップを踏むことが重要」と遠藤氏は話す。