日立製作所は、名札型のウェアラブルセンサーで人の行動データを収集して、身体の動きから幸福感を「組織活性度」として定量化する技術を開発し、これを社内で実践するとともに、2015年から顧客企業に対しても組織活性化を支援するソリューションとして提供している(参考記事:IoTとAIで未来の働き方[第2回]名札型センサーで「組織の活性度」を可視化する)。
名札型ウェアラブルセンサー(左)と、
行動データを可視化し、AIによるアドバイスを行うアプリケーション
さらに2016年6月には、各個人の行動データから、幸福感の向上に有効なアドバイスをAIが自動的に作成する技術を開発し、従業員がPC/スマートフォンのWebアプリでアドバイスを確認して、職場での行動に活かせるようにした。同月から10月にかけて、日立グループの法人営業部門26部署、約600人を対象にその実証実験を行った。
その結果、アプリの利用時間が長い部署では、そうでない組織と比べて「組織活性度」が格段に高くなり、また、組織活性度が上昇した部署ほど、翌四半期の受注達成率が高くなったという。
日立製作所・研究開発グループ技師長の矢野和男氏
研究開発グループ技師長の矢野和男氏によれば、組織活性度が上昇した部署では、実験の翌四半期の受注額が目標より平均で11%上回り「下降した部署との間では27%の受注達成率の差が出た」。今回、実証実験を行った法人営業部門は、業務において実施したアクションに対してその結果が得られるまでに比較的長い期間がかかるが、「そうしたタイムラグのある業務でも、組織活性度と業績との間の相関性が確認できた」とし、組織活性度が業績予測の先行指標として活用できると述べた。
組織活性度と受注達成率の相関
AIがアドバイス「○○部長とたくさん話しましょう」
この、AIによる働き方アドバイスはどのような仕組みで行われているのか。
名札型ウェアラブルセンサーは装着した人の身体の動きや振るまいを加速度センサーで計測し、また赤外線によって、対面して会話している相手とその時間も測ることができる。会議室や休憩スペース等に赤外線ビーコンを設置すれば、そのエリアに滞在している人とその時間(会議の人数や時間など)を検知することも可能だ。
名札型ウェアラブル計測技術の概要
こうして収集したデータを基に、誰と誰がよく会話をしているといった、集団・組織の動き、コミュニケーションの状況を可視化。データの解析は、日立製作所の人工知能技術「Hitachi AI Technology/H」で行っている。