東京都豊島区は、一日あたりの乗降客が250万人を超える世界第2位の巨大ターミナル駅・池袋を擁する。
その池袋に2015年5月、新たなランドマークとして豊島区役所の新庁舎が完成した。地上49階・地下3階の高層ビルは世界的に著名な建築家・隈研吾氏のデザイン監修による斬新な外観や、日本初のマンション一体型本庁舎であることが、全国の自治体関係者の注目を集めている。
「多くの人が見学に訪れる中で、『建物だけでなく中身も新しくなった』と言われるように職員の働き方を変えてほしい」――。高野之夫区長の指示を受け、政策経営部情報管理課では新庁舎への移転を機に、ワークスタイル変革を本格的に検討することになった。
1961年竣工の旧庁舎は、90年代に新庁舎の建設・移転計画が進んだものの、バブル経済の崩壊とともに計画が頓挫。その後、老朽化が激しくなったため約20年ぶりに庁舎の建設計画が持ち上がったという経緯がある。財政が厳しい中での新築・移転に、区民からは反対や批判の声が寄せられていた。このため、豊島区は「住民サービスの向上を目的とした庁舎移転」というコンセプトを打ち出し、情報管理課には「組織全体で改革し、職員が現場に出向けるようなワークスタイルの創出」が至上命題として与えられたという。
情報管理課課長(4月1日から税務課課長)の高橋邦夫氏 |
情報管理課でワークスタイル変革の中心的役割を果たしたのが、課長の高橋邦夫氏(4月1日付で税務課課長に異動)だ。「新しもの好き」だという高橋氏は、かねてよりシスコシステムズや日本マイクロソフト(以下、日本MS)などの先進的な働き方に関心を持っていたが、旧庁舎は建物が古くさまざまな制約から実現できずにいた。今回、「庁舎の移転にトップの理解が重なり、思い切った取り組みができた」と話す。