ワークスタイル変革Day 2015 講演レポート日本IBM北氏「経営陣が責任をもって率先すれば社員も付いてくる」――“One IBM”の働き方改革

2002年の業績悪化・株価低迷を受けて、グローバルな視点での構造改革を図ったIBM。この取り組みによって、社員の働き方も大きく変わっていった。日本IBMの北好雄氏は、自社が進めてきた経営の見直しを基点とした社内の制度や仕組みの変更、それに伴うワークスタイル改革という一連の経緯と、新しい働き方を定着させるために行ってきた諸施策について説明した。

システムは継続的に改善・改良すれば利用頻度も上がる北氏は、「One IBM」の実現に向けた構造改革として、社内ポリシーやルールの変更、経営管理や人材活用、業務オペレーションの統一(世界共通化)、情報システムやコミュニケーション基盤の統合、国を越えたグローバルな枠組みでの組織体制の確立などを行ったと説明した。

「One IBM」の実現に向けた諸施策
「One IBM」の実現に向けた諸施策

続いて、ワークスタイル変革をOne IBM実現を目的とした“場所と時間の柔軟性の確保”として捉え、ITシステムと制度面での具体的な取り組みについて詳説した。

IBMの現在のコミュニケーション/コラボレーション基盤は、以下の5つが代表的なツールとなっているという。

(1)連絡、手続き、定型化した情報共有などに活用している「IBM Notes/Domino」
(2)会社や部門発信の情報収集に用いる社内ポータル「IBM Websphere Portal」
(3)IMやオンライン会議でリアルタイムにコミュニケーションする「IBM Sametime」
(4)知恵の共有、相手を知るために使う企業内SNSの「IBM Connections」
(5)いつでも、どこでも社内リソースにアクセスできるモバイル

「One IBM」の働き方を支えるITツール
「One IBM」の働く方を支えるITツール

これらの中で現在、社員の利用頻度が高いものが「IBM Sametime」と「IBM Connections」。

前者はプレゼンス機能を生かしたリアルタイムなボイスからチャット、ビデオ・Webミーティングなど、海外とのやり取りには必須で、国内の拠点間でも積極的に使われている。

後者は、FacebookやTwitterのようなSNSの企業版。社員間での協業や共有、フォローや発信を通じた自発的なギブアンドテイクが実施され、「これがないと仕事が回らないくらい皆が使っており、ポータルをはるかに上回る情報量になっている」という。

モバイルについては、かねてからノートPCも含めた社外からのリモートアクセス環境を整備してきたことに加えて、スマートデバイス活用を推進するための施策として、Notesメールの同期などを実現する「IBM Traveler」、通信の暗号化サーバ「IBM Mobile Connect」、さらにモバイルの端末、アプリケーション、コンテンツをトータルに管理する「IBM MaaS360」も導入している。北氏は、「MaaS360で管理する多様なアプリケーションから社内データにアクセスできるようにした。これによってスマートフォンのBYODも実現した」と付け加えた。

各種システムには、社員からのクレームや要望に対応して毎年改善・改良あるいは新機能追加を行っている。こうした継続的な取り組みが、システムの利用頻度向上につながるポイントだという。

また、情報セキュリティを担保するために社内ルールやガイドラインを作り直し、環境の変化に合わせた更新を毎年実施している。加えて、PCに関する標準環境の提供や資産・ライセンス管理、セキュリティ基準のチェック、パッチやソフトウェアの強制的な配布など、社員にルールを守らせる仕組みの整備にも力を入れている。

働く場所と時間の柔軟性の向上で働き方は変わるさらに、実際に働く場所=オフィスの柔軟性を高める施策として、フリーアドレスの採用、東京都心部におけるサテライトオフィスの設置、規模の大きな15事業所の一角を利用した他事業所の社員(出張者など)向けのビジターオフィスの開設、の3つについても解説した。

このうちサテライトオフィスは、山手線の主要駅6カ所の近くに設けた、貸事務所のような机と椅子、電源とLAN、プリンター、いくつかの会議室がある施設のこと。社員であれば24時間いつでも利用できる。

北氏自身も、外出予定がある時に最寄りのサテライトオフィスを使うことで、通勤や帰宅を含む移動の時間を短縮し、効率よく仕事を進められるようになったという。

東京都心6カ所に設置されたサテライトオフィスの概要
東京都心6カ所に設置されたサテライトオフィスの概要

最後に北氏は、ワークスタイル変革の取り組みを継続するポイントについて、「構造改革の推進体制が重要」と指摘。IBMの場合、「Smarter Enterprise」をキーワードとする構造改革を実現すべく、上級役員を責任者とする4段階の推進体制を構築しているという。

「Smarter Enterprise」への構造改革推進体制

そして、「経営陣がリスクを背負って率先的、継続的に改革を進めれば社員も付いていく。加えて、新しいワークスタイルが社員から見てモチベーションを維持できること、さらに社員が選択や工夫できる余地があれば、社員はワークスタイル変革に適応していくことができる」と強調した。

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