――IoT/M2Mの動向をどのように見ていますか?
井田 センサーなどで収集したデータを統合するアグリゲートプラットフォームの構築がIoT/M2Mのトレンドになっています。その中で、産業機械からデータを収集するIT(インフォメーションテクノロジー)と産業機械を管理するOT(オペレーションテクノロジー)との乖離が広がっており、それがIoTプロジェクトに複雑さをもたらしています。IoTプロジェクトの複雑さを解消するためには、ITの世界とOTの世界をもう一度結びつけることが必要です。ユーロテックはハードウェアとソフトウェアの両者を手がける会社であり、産業機械というハードウェアをしっかり管理できるプラットフォームを持っています。それにより、現場のOTとITの橋渡しをきちんと行う機能を提供できることがユーロテックの強みの1つです。
――IoTが普及するための要件についてどのように考えていますか?
井田 IoT技術は様々なデータの収集と活用を可能にしました。様々なデータを活用することによって企業は新しい価値を生み出すことができるようになります。それを実現するための要件は、データをアプリケーションに紐付けしないことです。特定のアプリケーション、特定のハードウェアを用いてデータを収集すると、そのデータは特定の用途でしか使えないものになります。データの再利用を行いデータを有効活用するためのポイントは2つあります。1つ目のポイントは、データを生成する側とデータを消費する側を分離することです。それによってデータを再利用することが可能となります。ユーロテックのIoTソリューションはデータの生成と消費を分離しています。もう1つのポイントは、オープン化されたプロトコルを利用することです。ユーロテックはMQTTやREST APIなどのオープンスタンダードに準拠し、ベンダーロックインを回避しています。
IoT/M2MプラットフォームがIoTアプリケーション開発のスピードを向上させる――ユーロテックのIoTソリューションはどのような構成になっているのですか。
井田 ユーロテックはIoTソリューションとして「Everyware Device Cloud(EDC)」を提供しています。EDCは2つの要素で構成されています。1つ目の要素は、産業機械が生成するデータを集約しクラウドに転送するマルチサービスゲートウェイです。2つ目の要素は、クラウドに集めたデータを分析し、ビジネスアプリケーションにつなげるためのIoT/M2Mインテグレーションプラットフォームです。マルチサービスゲートウェイはデータを収集する機能を担い、EverySoftwareFramework(ESF)というフレームワークを実装しています。一方、データ消費とデバイスの管理する機能を担うのがインテグレーションプラットフォームのEveryware Cloud(EC)です(図表1)。
図表1 ユーロテックのIoT/M2Mの仕組み |
――ECの機能とECがもたらす価値は?
井田 ECは、クラウドに集められたデータを様々なビジネスアプリケーションにつなげ、デバイスを管理する機能をパッケージ化しています(図表2)。ECはIoTアプリケーション開発に関する手数を削減し、システムの複雑さを解消します。IoT事業に参入する企業はECを利用することによってマーケットインのスピードを高めることができます(図表3、図表4)。
図表2 IoT/M2Mインテグレーションプラットフォーム |
図表3 複雑になりがちなIoTプロジェクト=現状 |
図表4 複雑になりがちなIoTプロジェクト=ユーロテックの提案 |
――では、ESFの機能とその活用効果は?
井田 ESFは、Linux、Java VM、OSGiアプリケーションコンテナなどで構成されたフレームワークです(図表5)。データを収集してクラウドに飛ばし、数値化することは意外に大変なことなのです。データを生み出す側のデバイスは様々存在し、インタフェースもシリアルやイーサネットなどデバイスごとに異なります。ユーロテックのマルチサービスゲートウェイが実装しているESFは、デバイスアブストラクション機能によってデバイスのインタフェースを抽象化し、デバイスからデータを収集するためのプログラムを開発する速度を向上させる役割を果たします。ユーロテックはVPNなど一部の機能を取り除いたESFをオープンソース化し、Eclipseのコミュニティにkuraというプロジェクトとして寄贈し、無償で利用することが可能です。kuraやESFを活用することによって初期投資を抑えてIoTシステムを素早く開発することが可能となります。
図表5 マルチサービス・ゲートウェイ |
ESFのもう1つの特徴は、オープンハードウェアを用いた開発を効率化することです。Raspberry Pieなどの安価なオープンハードウェアを用いることによって、IoTシステム開発にかかる初期投資を抑えることが可能となります。しかし、ネイティブでエージェントを開発する手法ではハードウェアごとにエージェントを変更することが必要となり、多くの時間とコストが発生します。それに対し、私どものフレームワークを利用することによって、1つのオープンハードウェア上で開発した環境を他のハードウェアで実行することが可能となります。ESFを利用することによって企業は投資した時間と費用を最大限生かすことができます。
――ユーロテックのM2M/IoTソリューションの導入実績は?
井田 ユーロテックはヨーロッパや米国でIoTソリューションを提供しています。例えば、温度や湿度、二酸化炭素など環境をモニタリングするシステム、鉄道車両や輸送車両の状態を監視するシステムなど、産業分野で豊富な実績をもっています。人の出入りを把握するピープルカウントソリューションは、化粧室や鉄道車両の利用状況のモニタリングに活用されています。また、防衛分野でもユーロテックのソリューションが採用されています。私どもはヨーロッパにおけるユーロテックの知見を日本市場において活用していこうと考えています。
10月8日(木)御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターで開催する「M2M/IoTカンファレンス2015」において、講演と展示でアドバネットのIoT活用事例やソリューションをご覧いただけます。
★お申し込みはこちらから→ http://www.ric.co.jp/expo/m2miot2015/