全国トップの医療費!タブレットを活用した保健指導で解決へ佐賀市が直面している課題の1つに、医療費の増大がある。全国の自治体に共通する悩みだが、実は佐賀県の医療費は全国1位。佐賀市の1人当たりの年間国保医療費も、全国平均より2割ほど高いのが現状だ。
「“シュガーロード”(砂糖の道)とも呼ばれる長崎街道沿いにある佐賀市の市民は、甘党が多いのが特徴です。それもあって、糖尿病の症状が悪化し、人工透析が必要になる方の比率が年々上昇しているのです」。こう話すのは、健康づくり課 保健師の森山友加里氏だ。
人工透析には、1人当たり年間500万円という高額な医療費がかかる。医療費が高い理由は他にもあるが、生活習慣病の予防により医療費削減と市民の幸福度向上を図ることが、佐賀市にとって喫緊の課題なのである。
そこで健康づくり課では、以前から生活習慣病の予防を重要なテーマとして、メタボリックシンドロームの市民などを対象に、保健師による保健指導に力を入れてきた。しかし、医療費を抑制していくためには、保健指導をもっと“効率的”に、もっと“効果的”に変革していく必要がある。その実現手段となったのがタブレットだった。
佐賀市 保健福祉部 健康づくり課 保健師 森山友加里氏 |
佐賀市の健康づくり課では、できるだけ市民の自宅を訪問して保健指導を行うようにしている。「普段の生活を知ることで、より適切な保健指導ができるからです」(森山氏)。
庁舎内で実施する健康相談会などもあるため、訪問での保健指導に出かけられるのは週に3~4日に限られる。つまり、1日当たりの訪問件数をどうやってアップさせるかがカギとなるが、そのために必要だったのが訪問準備の“効率化”だった。
訪問ルートの事前調査や、訪問相手に合わせた保健指導用資料の用意など、以前は訪問のための準備時間が平均60分かかっていた。しかし、タブレットの導入後は、平均50分と10分も短縮できたという。
訪問ルートについては、事前に調べておかなくてもタブレットとGoogleマップを活用し、外出先でも簡単に分かるようになった。また、保健指導用の資料に関しても、KDDIファイルストレージに保存し、いつでもどこでも必要な資料をタブレットから使えるようにしたからだ。
健康づくり課の年間の訪問件数はおよそ5000件。1件当たり10分の短縮というと、1年間で833時間の時間が生み出されることになる。この時間を訪問件数アップにあてられるようになったのだ。
重たい紙の資料を持ち運ばなくても、クラウド上に保存された資料を使って的確な保健指導が行えるように |
時間以外の面でも効率化が図れている。まず、持ち運ぶ資料の量が以前の約2kgから0.7kgへと大幅に軽減された。訪問時の交通手段としては、自動車ではなく、自転車を利用することも多く、保健師の負担は大きく減ったという。
また、タブレットの活用は、直接的なコスト削減効果ももたらした。カラーコピー/印刷費の削減だ。従来は、1訪問当たり平均5枚の資料をコピー/印刷していたが、タブレットとKDDIファイルストレージによるペーパーレス化で、平均3枚に減らせたためだ。年間5000件の訪問回数で計算すると、1万枚分の用紙代と印刷代の削減につながっていることになる。