「僕の感覚で言うと、もう爆発直前。インターロップが始まった1994年のインターネット前夜と同じようなときに、IoTも来ているのではないか」
IoT(Internet of Things)の現状について、こう語る堀江氏。「インターネット黎明期のような『何をやっても儲かります』という時代に近い」とすら感じているそうだ。
IoTがこれほど盛り上がる「起点」となったのは、堀江氏によれば「スマートフォン革命」である。スマートフォン革命は、次の2つの大きな変革を世の中にもたらした。
まずは、ブロードバンドに常時接続しているLinuxパソコンを、非常に多くの人に普及させたことだ。「スマートフォンは電話ではなくパソコンだ。スティーブ・ジョブズはまんまとだまし、パソコンを使わないような普通のおじちゃん、おばちゃんにまで、常時接続しているLinuxパソコンを持たせてしまった」
スマートフォン革命の副作用がIoTの起点に
もう1つは、センサーの価格を劇的に下げたことだ。「これは、どちらかといえば、スマートフォン革命の副作用。スティーブ・ジョブズもそこまでは意図していなかったと思う」
スマートフォンには加速度センサーやジャイロセンサーなど、非常に多くの種類のセンサーが内蔵されている。スマートフォンの爆発的普及によってセンサーの大量生産が始まったことで、急激に低価格化が進んだ。さらに、センサーのコンパクト化や省電力化といったイノベーションも一気に進展することになった。
スマートフォン革命をきっかけとした、センサーの低価格化とコンパクト化、省電力化が、今のIoTの盛り上がりを支える重要な要因となっているのである。
「ロボットやドローンにしても、スマートフォン革命が起点になっている。飛行できるラジコンは何十年も前からあるが、操作が難しかった。それが今はジャイロセンサーなどを使い、姿勢の制御は全部コンピュータでやっている。センサーが安くなったことでドローンにセンサーを搭載できるようになり、誰でもドローンを使えるようになった」
もちろん、IoTをめぐっては、サクセスストーリーばかりでもない。例えば、グーグルが鳴り物入りで始めたものの、販売終了となったGoogle Glass。ただ、堀江氏は、Google Glassを失敗だとは考えていないようだ。「『Google GlassはNewtonだと思え」と最近言っている」
Newtonとは、アップルが1993年に発売した世界初のPDA(個人用携帯情報端末)である。Newtonに対する評価は当時散々だったが、アップルはおよそ15年後にその進化系といえるiPhoneで大成功を収めた。「Google Glassも5年くらい経ったら、そうなるかもしれない」。堀江氏によると、人間の網膜にレーザー光線で直接映像を映し出す技術が登場するなど、この分野では大変な技術革新が進んでいるという。
スマートフォン革命は、多くの業界に地殻変動をもたらすことになった。例えば、携帯電話端末業界をとっても、多くのメーカーが事業の撤退・縮小を迫られることになった。現在のGoogle Glassを見て、「ウェアラブルデバイスはうまく行かない」と簡単に切り捨ててしまうようでは、これから本格化するIoT革命において、ビジネスチャンスを掴むことなど到底できないのだろう。