KDDI松田社長「堺をAI実装の発進基地に」、産業創出拠点プロジェクトを始動

KDDIは2026年10月27日、ビジネスイベント「KDDI SUMMIT 2026」を開幕した。基調講演に登壇した松田浩路社長は、顧客に提供する「体験」の高度化などにAIを活用する考えを強調。auショップにおける接客や、通信エリア品質の改善にAIを活かす取り組みを紹介した。また、大阪・堺を軸とする産業創出拠点「アライアンスパーク・プロジェクト」の始動も発表した。

通信エリア品質もAIが底上げ

通信エリアの拡充や品質改善においても、AIの活用を進めている。

通信エリア品質の向上にAIを活用

通信エリア品質の向上にAIを活用

松田氏は通信品質を左右する要素として、基地局の配置、通信容量に続く第3の要素であるパラメータ最適化におけるAI活用を紹介した。隣接するセル間で発生する干渉波の影響なども含めて、膨大な組み合わせからAIモデルで最適解を導くことで、「通常なら2年ほどかかる作業を1カ月弱に短縮した」。また、干渉波の抑制には量子アニーリング技術も用いているという。

こうした取り組みの成果として、松田氏はOpensignal社の通信体感分析で最多受賞の5連覇を達成したことも発表した。

高輪、堺、山口を産業創出の実践拠点「アライアンスパーク」に

AIで人の力を高めることに加え、松田氏が重視するのが、熱量を持つ人々が集まる「場」の創出だ。

松田氏は、パートナーとの産業創出の実践拠点「アライアンスパーク・プロジェクト」の始動を発表。本社を構える東京・高輪を「未来への実験場」、山口を「宇宙との玄関口」、そして大阪・堺を「AI実装の発進基地」と位置づけた。

アライアンスパーク・プロジェクト

大阪・堺を中核に「アライアンスパーク・プロジェクト」を始動

中核となるのが堺だ。旧シャープ液晶工場跡地で今年1月に稼働した大阪堺データセンターを基盤に、AIモデル開発企業やロボティクス企業、モビリティ事業者ら様々な分野のパートナーと連携し、AIの社会実装を推進する。

大阪堺データセンターには2027年度、エヌビディアの最新GPUを搭載した「NVIDIA HGX Rubin NVL8」を導入。公表値によれば、推論スループットは前世代比で最大10倍になるという。この計算基盤の上で、自動運転、ロボット、ドローンの社会実装を進める。

自動運転については、大阪を中心に約1700台のタクシーを運行するnewmoと連携。同社が計画する2028年度のレベル4自動運転タクシーの商用運行を、計算資源と通信、監視の面で支える。

ロボティクスでは、ELYZAと設立した新会社「ELYZA Robotics」が10月1日に事業を開始した。2030年度までに「研究開発へ300億円を投じ、300名以上の専門組織を構築して、1000台以上のロボットの現場導入を目指す」(松田氏)。

フィジカルAIを推進する新会社「ELYZA Robotics」

フィジカルAIを推進する新会社「ELYZA Robotics」

ドローンでは、Alphabet傘下のWingと国内配送に向けた戦略的パートナーシップを締結した。2027年中に一部エリアで、ローソン商品を含む食料品や日用品の配送開始を目指すという。

このほか、山口では、地球-月間通信を始めとする宇宙関連事業も推進。高輪本社も含めて、パートナーとの共創を進めるとした。

松田氏は最後に、通信事業者としての立場から、AI処理の分散配置を見据えた基盤ネットワークの拡充・強化についても言及した。産業ごとにAIの知能を置くべき場所は異なるとの見立てを述べたうえで、「それをつなぐのが我々ネットワークの役割になっていく」と同氏。堺で得た成果を全国へ発進するため、「学習も推論も、ネットワークの伝送遅延を模擬しながら実証を進める」との方針を示した。

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