NTTは2026年10月27日、映像監視において監視対象とする物体の検知距離を従来比で3倍以上に拡大する技術を実証したと発表した。
道路や空港などのインフラ監視では、カメラの設置台数を削減するため、広範囲に高解像度で撮影可能な4Kカメラの採用が期待されている。また、その映像解析では、生成AIの1つであるVLM(Vision Language Model、視覚言語モデル)を活用した効率化も見込まれている。
しかし、「VLMの短所は扱える映像の解像度が限られること」とNTT デバイステクノロジーセンタの鵜澤寛之氏は指摘した。
4K映像をVLMに入力する場合は解像度を下げる必要があり、遠方の小さな対象が潰れてしまう。高機能なVLMであっても、画像の縮小によって失われた情報を解析することは困難だ。また、VLMの前段に物体検出器を配置し、対象となる物体を抽出してから解析する方法もあるが、物体検出器にも入力解像度の制約があるため、根本的な解決にはならないという。

NTT デバイステクノロジーセンタの鵜澤寛之氏
LSIが4K映像を縮小せず物体を検出
そこでNTTは、独自開発した「超高精細映像AI推論LSI」をVLMの前段階の処理に活用した。このLSIは、4K映像を縮小せずに物体を検出できることが特徴だ。一般的なVLMの入力解像度に縮小して解析する従来方式と比べ、遠方の小さな物体の検知可能距離を3倍以上に拡大したという。
具体的には、LSIが4K映像から物体を検出・追跡し、位置や速度、移動方向などの動きの情報を生成する。今回のシステムでは、停止車両、逆走車両、落下物、人の侵入などがスクリーニング条件として設定されており、該当する対象を検出した場合、その対象と周辺を4K映像から縮小せずに切り出す。これを動きの情報とともにVLMに入力し、事故などの状況判断を行う。

実証の背景と成果
VLMへの入力回数を98.1%削減
鵜澤氏は、この技術によってVLMへの入力回数を大幅に削減できると説明した。公開データセットの映像を4Kにアップスケールした、30fpsの1分間の事故映像を用いた実験では、映像全体をVLMに入力する従来方式の場合、1800回の入力を行っても異常を示唆する結果は得られなかった。
これに対し今回の方式では、異常が疑われる対象の周辺を320ピクセル四方の画像に切り出し、動きの情報とともにVLMに入力したところ、事故に該当する状態異常として認識された。VLMへの入力回数は34回にとどまり、約98.1%削減した。入力データ量が削減できるため、トークン消費量や通信量、処理負荷の低減も期待される。

技術のポイント。同LSIは映像奥の黄色い車を停止車両と認識し切り出してVLMに入力
同LSIは4K映像を30fpsで常時解析し、異常が疑われる場面に限ってVLMによる状況判断を行う。鵜澤氏によれば、処理に時間のかかるVLMの実行回数を抑えることで、システム全体としてリアルタイム処理に相当する動作が可能になるという。








