うるう秒は「うるう時」にならない
「うるう秒の停止」を決めたCGPMの決議では、具体的に何が決まったのか。解説したのは、NICT 電磁波研究所 電磁波標準研究センター 時空標準研究室 室長の井戸哲也氏だ。同氏は時間・周波数諮問委員会(CCTF)のタスクフォース、Continuous UTCで共同議長を務め、決議文の準備に携わった。
うるう秒とは、原子時計に基づく協定世界時(UTC)と、地球の自転に基づく世界時(UT1)のずれを調整するために、1972年から運用されている仕組みだ。UTCとUT1の差の許容上限は0.9秒とされ、このうちにズレを収めるために、UTCに1秒を挿入したり、引いたりする。
今回の決議5「UTCの連続性確保」により、2027年5月20日以降、協定世界時(UTC)にうるう秒は挿入・削除されない。上記の許容上限は現行の0.9秒から3600秒、つまり1時間に広がる。

UTCに1秒を足す・引く「うるう秒」の停止が決まった
井戸氏は、一部の報道で「次は1時間単位の『うるう時』になる」と報じられたことに触れたうえで、それを否定。「今回の決議で決まったのは、今まで1秒だったものを3600秒まで放っておくということ。3600秒に達した時どうするかは、まだ何も決まっていない」と説明した。
上限に達するのは数世紀以上先とみられ、その扱いは将来世代に委ねられる。「少なくとも皆さんが生きている間も大丈夫、孫も大丈夫」と同氏。なお、発効日の5月20日は世界計量記念日に合わせたもので、日付自体に技術的な意味はないという。
うるう秒廃止は、生活へ影響しないのか
廃止の背景は3つある。1つは「負のうるう秒」だ。これまでは、必要に応じて1秒を足す「正のうるう秒」の運用が行われてきたが、地球の自転が加速し、1秒を抜く調整が必要になる可能性が出てきた。実施例がなく、多くのシステムでは対応が難しいとみられている。
2つ目は、従来の正のうるう秒も障害リスクになる点だ。最後のうるう秒は2016年12月31日で、ほとんどのシステムは約10年間、うるう秒を経験していない。
3つ目は、UTCを「唯一の国際基準時刻」として守ることだ。うるう秒を嫌って別の時刻系へ移る利用者が出れば、国際標準が分裂しかねない。
とはいえ、1時間もずれて生活に支障はないのか。井戸氏によれば、タイムゾーンや夏時間によって、多くの国がすでに1時間以上ずれた時刻で暮らしているため、生活にはほぼ影響はないという。

うるう秒停止の影響と残る論点
今回の決議により、今後、一般的なシステムではうるう秒への対応が不要になる。時刻同期システムのNTP(Network Time Protocol)やPTP(Precision Time Protocol)のうるう秒予告、smear処理(数十時間かけて1秒分の誤差を少しずつ微調整する手法)も役目を終える。一方、天文・測地・衛星の分野では、1秒を超えて広がる地球自転との差を、別のパラメータとして取得・管理する必要が出てくる。
「日常の時刻はシンプルになります。安心してUTCを使っていただけたら」と井戸氏は述べた。














