SPECIAL TOPIC5Gは速いだけでは社会インフラになれない フィジカルAIを支える止めない通信

フィジカルAIや自律型ロボットの普及に伴い、産業ネットワークには高速性だけでなく、障害時にも通信を継続する設計が求められている。IDYは5G Multi-RAT、複数SIM、5G通信系統の二重化、運用監視を組み合わせ、放送、鉄道・モビリティ、物流、BCP、防災、産業・ロボットを支える止めない通信基盤へ事業領域を広げる。

回線、通信系統、運用の三層で「止めない通信」を実現

IDYが構想する「止めない通信」は、回線、通信系統、運用の三層で構成される(図表1)。回線層では、キャリア5G/LTE、ローカル5G、地域BWAなど、性質の異なるネットワークを組み合わせる。特定の回線や基地局に障害が発生しても、別のネットワークへ切り替え可能にするためだ。その基盤技術として採用するのが、5G Multi-RATである。複数の通信方式を同時に、あるいは切り替えて利用できる。

図表1 回線・通信系統・運用で支える「止めない通信」(クリックで画像拡大)

図表1 回線・通信系統・運用で支える「止めない通信」

通信系統層では、iR800BのマルチSIM機能にiS201Bを組み合わせれば、最大3枚のSIMを収容し、2回線を同時利用できる。iR800B内蔵の5G通信機能とUSB接続の5Gモデムを併用し、回線に加えて5G通信系統も二重化する。一方の通信経路が途絶した場合に、もう一方へ切り替えるほか、映像と制御、通常通信とバックアップなど、用途に応じた回線の使い分けにも対応する。

運用層では、複数拠点と複数回線の状態を一元的に把握する仕組みが必要になる。IDYは現在、各拠点の通信状態を地図上で一覧できるほか、通信冗長性、iR800BとiS201Bの伝送パス、最新アラート、回線切替・復旧履歴などを確認できる「IDY Dashboard」の開発を進めている(図表2)。本田氏が重視するのは、異常の検知では終わらせないことだ。「障害発生時に、どの回線へ切り替わり、現在どの経路で通信を継続しているのかを確認できれば、影響の範囲や復旧状況を把握しやすくなります。さらに、複数拠点の状態を同じ画面で比較できれば、現場へ向かう前に障害の範囲を絞り込み、復旧の優先順位も判断できます」。

図表2 開発中の「IDY Dashboard」の画面例(クリックで画像拡大)

図表2 開発中の「IDY Dashboard」の画面例

IDYは回線、通信系統、運用の三層を一体で設計し、「止めない通信」を提供していく考えだ。

放送、鉄道、物流など、止められない6つの現場へ

この「止めない通信」が特に求められる分野としてIDYが想定するのは、放送、鉄道・モビリティ、物流、BCP(事業継続計画)、防災、産業・ロボットの6つの社会インフラ分野である。

例えば、先行しているのは、放送だ。現場から送る映像は撮り直せず、数秒の通信断でも放送品質に影響する。異なる通信事業者の回線を同時に用い、状態を遠隔監視することで、通信障害時にも映像伝送を継続しやすくなる。

鉄道・モビリティでは、移動に伴って通信環境が変化する。そのため、車両に設置したカメラなどを1つのネットワークに固定せず、利用可能な回線へ切り替える設計が有効だ。

物流では、倉庫や配送拠点の監視、温度管理、入出庫システムを支える通信が止まれば、モノの流れそのものに影響する。

産業・ロボット分野では、ロボットやAGV/AMR、カメラ、設備が通信を介して協調する。自動化が進むほど、わずかな通信断が工程停止や判断の遅れに直結するため、複数回線と端末側の制御を組み合わせた通信継続性の設計が重要になる。キャリア5G/LTE、地域BWA、ローカル5Gなどを柔軟に使えるネットワークは、そのための共通インフラになると本田氏は話す。

IDYはこれまで、無線(RF)、アンテナから組み込みソフトウェア、エッジ処理まで、通信システム全体を見据えた設計に取り組んできた。この技術の蓄積を基に、製品の低遅延・高速性能に加え、通信系統の二重化や監視運用までを組み合わせる。今後は現場の要件に応じた回線構成と運用を提案する「通信ソリューションベンダーへ転換していく」と本田氏は言う。2026年9月30日にリニューアルした公式サイトでは、鉄道・モビリティ、物流、放送、防災、BCP、産業・ロボットの6分野ごとに「止めない通信」の構成を紹介。技術ページでは、Multi-RATやMulti-SIM、監視・自動復旧など、通信継続性を支える技術と評価結果も公開している。

本田氏は「高速化は5Gの価値を引き出すための第一歩でした。これからは、通信が止まる理由を1つずつなくし、社会を支える現場で使い続けられる仕組みにしていきます」と語る。

フィジカルAIの活用が広がるほど、通信には低遅延・高速性と、安定して使い続けられることが求められる。IDYは、5G Multi-RATとエッジゲートウェイ、通信系統の二重化、監視運用を組み合わせ、止められない現場を「止めない通信」で支えていく。

<お問い合わせ先>
株式会社IDY
公式サイト:https://idy-design.com/ja/

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