通信は「API中心」へ
AIエージェントは、タスクを実行するとき、まずユーザーから与えられた目的やそれまでの作業内容をAIモデルへ送り、次に取るべき行動を推論させる。必要な情報をWebサイトから取得し、APIを介して外部サービスや社内システムの機能を呼び出した後、得られた結果を再びAIモデルへ送る。結果が不十分なら検索条件を変え、新たな情報源や別の機能を利用する。こうした「推論、ツールの呼び出し、結果の評価」を、タスクが完了するまで反復する。
このため、通信はユーザーとAIサービスの間だけでは完結しない。エージェント、AIモデル、Webサイト、社内データベース、SaaSなどの間にも広がる。ネットワンシステムズ ビジネス開発本部 応用技術部 クラウドアプリケーションチーム エキスパートの渥美淳一氏は、AIエージェントがユーザーの代わりに各種システムへ接続する際にはAPIが中心となり、企業システムも「API中心のインフラ」へ変わっていくとみる。ただし、通信量は用途によって大きく異なるとも指摘する。「社内の契約書をすべてAIエージェントに渡して処理させるようなケースでは、データ量が一気に膨らむ。一方、単純なAPI同士のやり取りだけであれば、それほど大きくはならない」
そこでF5ネットワークスジャパンCTOの丸瀬明彦氏は、「AIエージェントの影響を捉えるには、まずWebやAPIのレイヤーを見る必要がある」と話す。人間向けの画面操作を起点としていた通信が、プログラム同士によるAPI呼び出しへ移るためだ。丸瀬氏によれば、AIエージェントの普及が本格化する前の2024年時点でも、F5が観測した通信の8~9割はすでにAPI通信であり、その半数以上が人手を介さず発生したものだったという。API中心のインフラへの移行は、AIエージェントの登場以前から進んでいたことになる。
エージェントで通信量“4.5倍”
シスコは、1つの指示から生じる通信量を具体的に示すための実験を実施している。調査用のAIエージェントに自社のIR情報やニュース、役員情報などの収集を指示すると、Web上の情報源44件を参照し、合計26.8MBの通信が発生した。人間が同じ作業をした場合と比べて通信量は約4.5倍になり、発生した通信の70%はAIエージェントとAIモデルの間の推論通信だった。取得データよりも、推論と応答の繰り返しが通信量を膨らませている。
通信の流れ方も従来のWeb通信とは異なる。Webページは保存済みのデータを一気に送れるが、AI推論は回答をトークン単位で生成しながら送るため、シスコの分析ではフローの継続時間が通常のWeb通信の約2倍に伸び、速度の中央値は約10分の1になった。上りと下りの比率も変わる。AIモデルへの要求にはユーザーの指示に加え、エージェントが取得した情報や行動履歴などが加わるため、上りが下りを上回るフローは通常のWeb通信で約0.5%だったのに対し、AI推論では約9%に達した。下り中心を前提にしてきたトラフィックの構成にも影響が及ぶ(図表1)。
図表1 AIエージェントによるネットワークトラフィックの変化










