エリア形成の考え方と適用技術
ミリ波を活用するためには、基地局配置の考え方自体を見直す必要がある。従来の広域カバレッジを前提とした配置ではなく、トラフィックが集中する“点”を的確に捉え、そこに対して容量を供給するアプローチが基本となる。
このため、アンテナの小型化や設置柔軟性の向上が重要となる。ガラス型やケーブル型アンテナのように設置場所の制約を緩和する技術に加え、反射や中継を組み合わせてカバレッジを補完する構成が現実的である。
また、ミリ波の面的なエリア形成においては、基地局単体でのカバレッジ確保には限界があり、中継技術の活用が重要となる。当社においても、こうした課題に対応するため、事業者間でのインフラ効率化を見据えた取り組みの一環として、ドコモとKDDIのミリ波電波を1台で中継可能とする装置の検討を進めている。
図表2 複数事業者共有のミリ波中継装置

結果として、ミリ波は“広げる”というよりも、“必要な場所に重ねる”発想へと移行している。特にイベント会場やスタジアムでは、入場ゲート、コンコース、物販ブース、展示ブースなど、トラフィックが集中する地点が比較的明確になっている。これらの場所に対して容量を重点配備することで、ミリ波の特性をより実効的に活かすことができる。
Galaxy with ME:Iとのコラボイベンドで、ミリ波の“体験価値”を可視化
ミリ波の価値を一般ユーザーに伝えるうえで、最も分かりやすいのは、実際に通信の差を体感できる場をつくることである。その意味で、「Samsung Galaxy presents TGC in あいち・なごや 2026」における弊社の取り組みは、ミリ波の通信に対する“感動”を直接届ける象徴的な事例といえる。
本イベントは、2026年2月15日にIGアリーナで開催された大型エンターテインメントイベントであり、会場には多数の来場者が集まった。イベント全体では来場者数が延べ約1万4800名、配信等を含む総体感人数は延べ約211万人規模とされており、会場内外で高い注目を集めた。こうした大規模イベントは、同一時間帯に通信需要が集中するため、ミリ波の有効性を体感してもらう場としても適している。

IGアリーナと、設置されたミリ波アンテナ(右)
施策の中心となったのは、サムスン電子ジャパンのドコモ「Galaxy with ME:I」とコラボしたブースで実施されたミリ波体験である。
来場者には、ミリ波対応端末と非対応端末の違いを比較しながら、イベント限定動画のダウンロードを体験いただいた。ミリ波非対応端末では37秒かかったダウンロードが、ミリ波対応端末では7秒で完了するという結果が示され、来場者にとっては通信速度の違いが抽象的な数値ではなく、自分の待ち時間として直感的に理解できる形となった。
この事例で重要なのは、単なる速度比較にとどまらなかった点である。ダウンロード対象はイベントと連動した限定コンテンツであり、Samsung Galaxyのステージ前には「Galaxy with ME:I SPECIAL STAGE」の見どころや意気込みを語った動画、ステージ後にはME:Iの新曲「Best Match」の推しカメラ動画が提供された。つまり、通信体験そのものがイベント体験と結びつき、「速いから便利」ではなく、「速いから、その場の感動をすぐに受け取れる」という価値に変換されていたのである。
ブース運営の結果、ミリ波体験者数は1000人以上に達した。あわせて実施されたフォトブース・ガチャ体験も1000人以上が参加しており、来場者の行動導線の中にミリ波体験が自然に組み込まれていたことがうかがえる。現場スタッフのコメントでも、「Galaxy Z Fold7」ならびに「Galaxy S25 Ultra」でのミリ波のダウンロード速度に対して「スピードが速すぎる」といった驚きの声が多く寄せられ、特にステージ後の複数動画ダウンロードでは、違いがより強く体感されていた。
【後編】では、ME:Iのメンバーによる「ミリ波講座」の様子と本イベントの意義、そしてミリ波の利用率を高めるための設計について述べる。










