AIの導入は「信頼の速度」で進む ネットワーク設計・構築・運用自律化への道筋

ネットワーク運用へのAI適用は実装段階へと移りつつある。どこまでをAIに委ね、どこに人間を残すのか。そして、AIが働ける前提条件は何か。エクストリームネットワークスに、運用自律化への道筋を聞いた。

「AIと人の協働」の具体例

――AIが適切な判断を下すには、ネットワークの構成や運用者の意図(インテント)がデータとして揃っている必要がありますね。

ラプー 「インテントデータベース」に、ネットワーク構成やインテントを保持しています。情報の範囲は幅広く、基本的なところでは機器の起動時設定、IPアドレス、RADIUSサーバーの情報、DNS等があります。

本番投入時にはもっと踏み込んだ定義を行います。例えば「L3のセグメンテーションが必要だ。VRF※を3つないし5つ用意する」「ユーザーセグメント向けにはこのL2サービスとIPサブネットが必要」といったことです。こうしたインテントを基にAIが設定を定義してインフラへ投入します。現在は、こうしたインテントの設定はGUIで行っていますが、2026年中には自然言語による設定を可能にする予定です。

設定の投入後も、Extreme Platform ONEは実機の状態とインテントを常に比較し、構成のズレを検知します。

重要なのは、人間にスクリプトを一切書かせないことです。個別に書かれたスクリプトは、書いた本人しか保守できない属人化の温床になるからです。プラットフォーム側の機能で自動化を完結させるべきだと考えており、セグメンテーションもセキュリティも、この仕組みの上で成り立っています。

――ネットワーク構築・運用時の負荷軽減の具体例を教えてください。

ラプー 我々は、キャンパスネットワーク、WAN、データセンターネットワークのいずれにも、IS-ISと呼ぶルーティングプロトコルですべて制御するファブリックアーキテクチャ「Fabric Connect」を採用しています。領域ごとにファブリックが分かれていると運用の分断が起こり、さらに境界ごとの設計負荷が生じるからです。

この単一プロトコルによる制御のおかげで、ブランチオフィスからWAN、データセンターまでをシームレスにつなぎ、シンプルに運用することが可能です。

さらに、ネットワーク設計・構築に当たっては、「ゼロタッチファブリック」機能により、作業負荷を大きく軽減できます。スイッチを設置してケーブルをつなげば、クラウドから設定が降りてきてファブリックが自動的に形成されます。例えば500台のスイッチを展開する場合でも、起動時設定を除けば、スイッチ側で行う設定作業は発生しません。

運用フェーズでは、ユーザーが端末を接続すると、ネットワークアクセス制御を通じて中央のポリシーがそのポートに適用され、ケーブルを抜けば設定は消えます。トポロジーにも依存しないため、配線の自由度が高いことも特徴です。各機器はインターネット経由でクラウドに接続し、インテントの設定をダウンロードします。

企業ネットにも400GやPTPが

――Fabric Connectによる運用シンプル化、効率化の実例を教えてください。

ラプー 例えば、米国、欧州、アジアの各拠点を1つのファブリックで結んでいる事例があります。これにより、L3 VPNやL2サービス、マルチキャストを世界規模で延伸できます。

デバッカー Fabric Connectはセグメンテーション機能を備えているため、これまで分かれていた複数の物理ネットワークを1つのファブリックに統合する動きが始まっています。

象徴的なのがスタジアムです。チケット販売・物販、観客向けのWi-Fi、店舗用、スコアボード制御、監視カメラ、映像音声配信といった性質の異なるネットワークを単一のファブリック上で稼働させています。ただし、これらの用途ごとに異なる要件に対応する必要が出てきたため、我々のスイッチは、映像配信に不可欠なPTP時刻同期の実装も進めています。ラプー 大容量化のニーズも高まってきました。金融機関、病院、大学等では、建物間などで400Gbpsスイッチを採用するケースも増えています。

――大容量化ニーズの高まりの背景には、AI普及の影響もありますか。

デバッカー AIトラフィックは本質的にスパイク的でランダムなものであり、ネットワークインフラは、その種のトラフィックを受け止められなければなりません。重要なのは、柔軟性です。トポロジーに依存しないファブリックであれば、帯域幅の追加や構成変更を動的に行えます。AI時代には、この柔軟性が効いてきます。

[月刊テレコミュニケーション 2026年9月号の記事を再構成]

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