「オープンという言葉は、まるで“おまじない”のように頻繁に使われるが、そのオープンという言葉に、本当に意味はあるのか。例えばどんな食品でもナチュラルフードと名乗ることはできるが、これは農薬を使わずに栽培された有機食品とは違うものだ。オープンという言葉の意味をしっかり考える必要がある」
オープンソースのSDNプロジェクト「OpenDaylight Project」のニーラ・ジャック氏が、こんな指摘から講演を開始したのは他でもない。ネットワーク業界では、ほとんどのベンダーが自社ソリューションの魅力を説明するうえで、オープンという言葉を用いる。しかし、真にオープンなSDNの取り組みは、OpenDaylightをおいてないと強調するためだ。
オープンソースソフトウェアでSDNを実現しようというOpenDaylightの挑戦は2013年にスタートした。メンバー企業としてシスコ、ジュニパー、ブロケード、HP、シトリックス、IBMなど、すべての主要プレイヤーが顔を揃え、すでにHydrogen、Heliumと2回のリリースを行っている。確かに同プロジェクトは、業界最大のオープンなSDNプロジェクトといえる。
OpenDaylightのメンバー企業 |
ネットワーク業界初の大規模オープンソースプロジェクト
では、なぜオープンが重要なのか。ジャック氏はまずイノベーションの観点から説明する。
「IT業界を見回すと、ひと握りの最大手企業が牛耳っているが、そこには課題がある。それはイノベーションが難しくなっていること。大手企業の内部はサイロ化されており、イノベーションが起こりにくくなっている」
その一例としてジャック氏が挙げたのは、今年2月に新たなCEOとしてサトヤ・ナデラ氏が就任したマイクロソフト。従来、マイクロソフトでは他部門の製品のソースコードは見ることができず、「部門間でコラボレーションする方法がなかった」。そこでナデラ氏が就任後、最初にやったことの1つが、他部門からもオープンにソースコードにアクセスできるようにすることだったという。
オープンソースはこれまでLinuxやHadoop、MySQLなどの巨大な成功を収めているが、ナデラ氏はマイクロソフトにイノベーションを取り戻すため、「オープンソースのマインドセットを社内に適用した」のである。
翻って、ネットワーク業界はどうか。「今まで大規模なオープンソースプロジェクトはなかった。しかし遂にOpenDaylightにより、そのときが到来した。このことを伝えるために、私は今日この会場に来た」とジャック氏は話した。