近年、ユニファイドコミュニケーション(UC)やモバイルを導入する企業が目立って増加している。ただ、UCやモバイルの導入実績を数多く持つシステムインテグレーターであるテクノバンの半澤直樹氏はこう警鐘を鳴らす。「私の個人的な感覚としては、UCやモバイルを導入して満足している方は、半数もいるかいないか」
テクノバン ITビジネス第2本部 インフラソリューション部 コラボレーションチーム ICTクリエイター 半澤直樹氏 |
なぜ当初期待した通りの効果を得られない企業が少ないのか。半澤氏は「UC&モバイルの運用と障害で知った、導入前に見えなかった敵!」と題し、ワークスタイル変革Day 2014で講演を行った。
テクノバンの事業概要 |
部門によって異なるUCやモバイルの導入目的
まず半澤氏は、「導入するにあたって、何を目的とし、どうなれば成功といえるのか。ここのところに問題は隠されている」と指摘する。
UCやモバイルの導入検討に関わる部門としては、おおまかに情シス、人事総務、経営層の3つが挙げられるが、当然、それぞれに立場や抱えている課題が違う。このためUCやモバイルの導入においても、「部門ごとの価値観の相違が発生する構造がある」のだ。
例えば、人事総務の場合は、人材確保やオフィススペースの削減、ワークライフバランスの向上などが、UCやモバイルに期待することだろう。一方、情シスが重視するのは、可用性の向上やBCP対策、コスト削減など。そして、経営層の場合は、売上拡大やコスト削減が目的となる。
このように立場が異なれば、UCやモバイル導入への期待も異なり、「システムを導入する際の調整が難航しがちという状況がある」という。
立場や部門によって異なるUCおよびモバイルの導入目的 |
導入後の評価も当然、立場によって異なってくる。まずポジティブな声からいくと、経営層や人事総務では、UCやモバイルの導入が「会社のアピールポイントになっている」と評価する意見が多く聞かれるという。「採用に良い影響が出ている」と実際に効果を実感している企業も少なくないそうだ。
一方、ネガティブな意見として代表的なのは、経営層の場合が「収益にどう貢献しているかが見えにくい」、人事総務が「ワークスタイルの変革に対応するための、勤怠管理やオフィススペースの整備など、管理業務の大幅改善に手を焼いた」、情シスが「運用管理が非常に煩雑になった」などだという。
人事総務や情シスといったUCやモバイル導入の実務を担当する部署においては、やはりそれに伴う負荷が不満として上ることが多いようだ。