「日本型UC」の答えは見えてきたのか?(後編)――シスコとマイクロソフトの取り組み

欧米のようにはいかない――。そう言われ続けて久しいユニファイドコミュニケーション(UC)だが、いよいよ日本企業にも根付く兆しが見えてきている。日本特有のニーズに応えるためのUCベンダーの取り組みを2回にわたりレポートする。後編では、グローバルのUC市場をリードするシスコとマイクロソフトの「日本型UC」への取り組みをを紹介する。

日本マイクロソフト――API公開でLync機能をアプリで拡張

UCの導入における課題の1つに労務管理の問題がある。UCの目的は、時間や場所にとらわれない多様な働き方を支えるコミュニケーション基盤を実現することにあるが、そうした分散型のワークスタイルを実践するに当たって、社員を適正に管理し評価する制度を構築することは簡単ではない。

この課題を解消することも、日本でUCを根付かせる上では欠かせない。ICTのベンダーが直接手を出すのが難しい領分ではあるが、その手助けとなるソリューションを提供しようと取り組んでいるのが日本マイクロソフトだ。Lyncの機能を使った拡張アプリケーションを開発し、Lyncそのものでは対応できないニーズに応えようという取り組みだ。

マイクロソフトはLyncの機能を活用するアプリを開発したり、他の業務・情報システムにIMやプレゼンス機能を組み込むためのAPIを公開している。これを使って、Lyncと連動する、在宅勤務者向けの勤怠管理アプリを開発した。その仕組みを図示したのが次の図表だ。

図表 勤怠管理アプリとLync の連携のイメージ
勤怠管理アプリとLync の連携のイメージ

このアプリには「業務開始」「休憩」「会議開始・終了」「業務終了」等のボタンが配置されており、ユーザーがオフィス外での業務を行う際に、それぞれのタイミングでボタンをクリックすると、ログ(業務時間や休憩時間等)が記録されていく。このボタンクリックとLyncは連動しており、「業務開始」クリックとともにLyncのプレゼンスがオンラインになり、場所は自宅と表示される。休憩中は「退席中」になる。

会議ボタンを押せば、LyncのWeb会議が自動的に立ち上がり、プレゼンスも「応答不可」に変わる。また、業務終了とともにLyncはオフラインになり、記録された1日のログはExcelデータとして出力され、労務管理に使うことができる。

日本の電話との隙間を埋める

もちろん、これだけで労務管理の問題がすべて解決されるものではない。「だが、日本市場でLyncを広げるには、こうしたLyncの機能拡張によって、お客様のニーズとのギャップを埋めていくことも不可欠」と、日本マイクロソフト Officeビジネス本部 エンタープライズプラットフォームグループ エグゼクティブプロダクトマネージャーの小国幸司氏は話す。

日本マイクロソフト 小国幸司氏
日本マイクロソフト Officeビジネス本部 エンタープライズプラットフォームグループ エグゼクティブプロダクトマネージャー 小国幸司氏

アプリは開発中のもので、労務管理に有効な機能をさらに盛り込んでいくという。例えば、PC画面のスクリーンショットを定期的に撮る機能を備えれば、業務時間中にネットサーフィンをしている従業員を監視できるし、位置情報も連動してログが取れれば、従業員の所在もリアルタイムに管理できる。

Lyncはグローバルに販売されている製品であり、カスタマイズ要求の強い日本企業が導入する際には、不足する機能も少なくない。Lyncの機能拡張や連動アプリの開発で、そのギャップを埋める取り組みを販売パートナーやアプリ開発ベンダーに広げていくことも大切になる。

「勤怠管理はその一例に過ぎない。要望を聞きながら、Lyncを使いやすくする機能拡張もどんどん進めていきたい」と小国氏は話す。例えば、PBX/ビジネスホンの電話機には通話中の音声をボタン1つで録音できる機能がついているものが多いが、Lyncでも同じことがしたいという要望もあるという。そうしたニーズに応えるカスタムアプリを開発すれば、日本ならではの電話の使い方とのギャップを埋め、Lyncの導入に一層弾みをつけることができるだろう。

月刊テレコミュニケーション2014年7月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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