次いで演壇に立ったのが、HPでNFVの標準化活動に携わるマリー-ポール オディー二氏だ。セッションでは、ETSIの標準化の動きを踏まえ、BTやベライゾン、テレフォニカ、AT&T、オレンジ、ドイツテレコムのPoCの取り組みが報告された。
このうちBTはBRAS(Broadband Remote Access Server)の機能を仮想化してサービスを行うことに成功。ベライゾンは、NFVの活用によりコスト削減だけでなく、(1)サービスの処理が集中した際にHPのクラウドを活用して一時的に容量を拡大する「クラウドバースティング」、(2)SMSなどWeb以外のコンテンツでもペアレントコントロールを効果的に行えるネットワークベースのコンテンツフィルタリングなど、新たな試みも行われているという。
オディー二氏は「NFV/SDNの環境では、新しいビジネスモデルの登場が予想される。ダイナミックなプログラマブルAPIによりネットワークが新たな形で使われるようにもなるはずだ。欧州の事業者はコストを圧縮するためにインフラの共用に積極的だが、将来的にはこうした分野にも利用されるのではないか」という見方を示した。
ETSI ISG NFV ソフトウェアアーキテクチャーWG 共同議長 ヒューレット・パッカード コミュニケーション&メディアソリューソンズ(CMS)CTオフィス HPディスティングィッシュトテクノロジスト マリー-ポール オディー二氏 |
エグゼクティブトラックの最後を飾ったのが、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授の藤川佳則氏による特別講演。テーマは「サービス・ドミナント・ロジック思考が生むイノベーションの可能性」である。
サービス・ドミナント・ロジックは、若い学問と言われる経営学の中でも1990年代に本格的な研究が始まったサービスマネジメント分野の最先端。最もホットな研究テーマだという。
サービス・ドミナント・ロジック(S-Dロジック)は、サービスを「経済活動の中心となっている『モノ』以外の何かと捉える従来の考え方(グッズ・ドミナント・ロジック、G-Dロジック)の対抗軸として出てきたもの。サービスを「価値作り」の源泉として考え「モノを介して提供するサービス」「モノを介さないサービス」の2つの類型で捉える点に特徴がある。
藤川氏は「これにより業態が異なる企業でも全部同じ経営論理で組み立てることができる」と説明する。サービスの市場をより実態に近いものとして理解し、新たな解決策を見出そうというのである。
S-Dロジックに即したサービスの具体例として、30万台の建設機器に通信モジュールを搭載し、運用情報や位置情報などを無線ネットワークで集約し、これを運用管理や盗難対策などの新たな収益事業につなげているコマツの例などが多数紹介された。その上で藤川氏はG-DロジックからS-Dロジックへの転換の必要性や、そのための手だてなどについて論を進めた。
経営学の最先端の論理を身近な例を引いて分かりやすく伝える「講義」に、多くの参加者が引きこまれた。
一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 准教授 藤川佳則氏 |
エグゼクティブトラックに先立って行われたソリューショントラックは、「NFVテクノロジー」と「テレコムソリューション」の2コースに分けて実施された。前者はもちろんテレコムソリューションにおいても3セッション中2つが機能モジュールの仮想化をテーマしたものとなっており、今回の Telecom Executive ForumはHPがいかにNFVに注力しているかを明確に示すものとなった。
仮想化メディアサーバーのデモンストレーション。会場では仮想化HSS、OSSソリューションの仮想化のデモも行われた |