日本HPが通信キャリア向けセミナーNFVは2016-17年にブレイク、すべてが変わることになる

日本HPが、通信キャリアを対象としたプライベートセミナーを開催した。テーマは通信ネットワークの機能を汎用サーバー上で実現するNFV。実用化間近のこの新たなソリューションに通信キャリアの強い関心が集まった。

日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は2014年5月22日、通信キャリアを対象としたプライベートセミナー「HP Telecom Executive Forum 2014」を東京・六本木の東京ミッドタウン ホール&カンファレンスで開催した。

HPは、OSS/BSSを中心とした通信キャリア向けソリューションの有力プレイヤーの1社で、日本のキャリア各社に同社の製品がさまざまな分野で採用されている。

HP Telecom Executive Forumは、通信キャリアのエグゼクティブ層、ネットワーク担当責任者、技術研究責任者を対象に、世界市場における通信インフラの技術・ビジネスの動向とHPの最新のソリューションを紹介する場として、毎年この時期に開かれている。

今回のメインテーマは、通信ネットワークの機能をx86ベースの汎用サーバー上で実現するNFV(Network Functions Virtualization)。2月に開催されたMobile World Congress 2014で発表された「Open NFV プログラム」をはじめとするHPの意欲的なNFVへの取り組みに、参加者の強い関心が集まった。

事業の鍵握るオーケストレーター

フォーラムは、グローバル市場の動向とそれを踏まえたHPの事業・製品戦略をテーマとする「エグゼクティブトラック」と通信キャリア向け製品の最新ラインナップを紹介する「ソリューショントラック」の2部構成で行われた。

エグゼクティブトラックでは、まずHP本社で通信キャリア向けソリューション部門の責任者を務めるデイビット・スライター氏が挨拶に立ち、「2014年はまさに転換の年。このイベントはHPだけでなく、通信キャリアの皆様、そして通信業界にとっても非常に重要かつエキサイティングなものになる」と期待感を示した。

HP
ヒューレット・パッカード、 エンタープライズ・サービス、 コミュニケーション・アンド・メディアソリューションズ (CMS)バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー デイビット・スライター氏

続いて行われた基調講演では、HP本社の通信業界向け開発部門(CMS)でCTOを務めるジェフ・エドルンド氏が「HPのNFV戦略と急速に変化する通信業界への取り組み」と題し、Open NFV プログラムを軸とした同社のNFV戦略の全容を解説した。

エドルンド氏はまず、「HPはIT分野で20年にわたり主導的な地位を維持すると同時に、通信キャリア向けのビジネスでも充実した経験を持っている。この2つを組み合わせることで非常にパワフルなNFVを通信キャリアに提供できる立場にある」と、この分野でのHPの優位性を強調した。

さらに「NFVの利点としてCAPEX/OPEX(設備投資/運用経費)の削減が挙られるが、通信キャリアの声を聞いていると、最も大きなメリットとして俊敏性が実現されることでリスクや損失を恐れずに多くのサービスを試せるようになることが、期待されている」と指摘した。

例えば、HSS(加入者情報管理サーバー)の構築には現状では90日程度の期間がかかっているが、NFV環境ではわずか数十秒で行えるようになるという。システム構築が格段に効率化されることで、サービス開発の手法も大きく変わる可能性があるのだ。

HPが推進しているOpen NFVプログラムは、(1)HPが想定するNFVの全体構成を示した「参照アーキテクチャー」の策定、(2)NFV上でのサービスを実証できる環境を通信キャリア事業やベンダーに提供する「オープンNFVラボ」の展開、(3)仮想インフラやオーケストレーターのAPIの公開やSDK(開発キット)の提供によりマルチベンダー環境での接続性の確保や協業を可能にする「パートナープログラム」、(4)「PoC(実証実験)のカタログ」などのNFV推進のためのサービスの提供の4つの柱からなる。(2)のオープンNFVラボは現在、フランスのグルノーブル、米国のヒューストン、フォートコリンズの3カ所に設置されており、4つ目のラボをシンガポールに設置することが計画されているという。

Open NFVプログラムで策定された「参照アーキテクチャー」はETSI(European Telecommunications Standards Institute)で策定されたNFV標準に準拠したもの。HPは、これに沿った形で、ハードウェアからOS、HSSなどの機能モジュールまでネットワーク構築に必要なファクターを用意する計画。同時に他のベンダーの製品をサポートできるようにすることで通信キャリアがNFVを円滑に導入できる環境を整える考えだ。

HPはNFVのエコシステムの全領域をカバーする製品群を持つ数少ないベンダーの1社だが、参照アーキテクチャーの策定で自ら手掛けていない製品も他のベンダーとの協業の形で提供できるようにする。特にHPが持っていないハイパーバイザーについては、市場で主力となっているVMware、Hyper-V、KVM、Xenをサポート、これらとの協業を可能にしているという。

この中で、HPのNFVビジネス成功の鍵を握るのがVNF(Virtual Network Functions、仮想化された機能モジュール)を配備・設定・管理する機能を担うオーケストレーションとリソースマネジメントの2つの機能を持つ「NFV ダイレクター」である。HPでは年内にすべてのVNFをこの製品で統合することを目標にしているという。

エドルンド氏はNFV ダイレクターの導入メリットとして「NFV標準準拠のオーケストレーターを導入することで、通信キャリアは特定のベンダーからすべてのVNFを買う必要がなくなり、ニーズに合わせて最適な製品を選ぶことができるようになる」と指摘した。NFVに移行することで、ベンダーが囲い混んでいる通信キャリアのネットワークが開放される。通信キャリアの選択肢が広がることによりHPにビジネスチャンスが生まれる可能性があるのだ。エドルンド氏は「NFVですべてが変わってくる」という。

NFVエコシステムでHPがカバーしている分野
NFVエコシステムでHPがカバーしている分野

さらにエドルンド氏は今後の展開を「2014年から2015年にかけSDNがイネーブラーとの形でNFVに入っていく。そして2016年から17年にかけてどこかの時点でネットワーク機能の完全なNFVへの移行が実現するのではないか」と予測し、「HPはこの変革において最良のパートナーでありたいと願っている」と述べてセッションを締め括った。

HP
ヒューレット・パッカード、エンタープライズサービス・コミュニケーション&メディアソリューソンズ(CMS)CTO ジェフ・エドルンド氏

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