スループットだけでは不十分、1000億の端末が円滑につながる環境を作りあげる通信ベンダートップに踊り出たファーウェイが描くネットワーク戦略

通信インフラグローバルベンダートップのエリクソンを売上高で抜いた中国・ファーウェイが、LTE-Advancedに向けたビジネスで攻勢をかけている。これを支えているのが、意欲的な開発投資と通信事業者との共同開発体制だ。日本法人で通信インフラ事業を所管する周 明成副社長にLTE-Advanced/5G時代に向けた戦略を尋ねた。

DWDMの活用で基地局のネットワークコストを大きく削減できる

――先般発表された「FrontHaul(フロントホール)」というソリューションでは、携帯電話基地局をDWDMで結ぶことを提案しています。

 FrontHaulは、C-RAN(Centralized Radio Access Network)を効率的に構築するためのソリューションです。

LTE-Advancedの要素技術であるCAやCoMP(Coordinated Multipoint、基地局間の干渉回避技術)などでは基地間の連携をとる必要がありますが、離れた場所にある基地局同士を接続することは簡単ではありません。そこで基地局で信号制御を行うBBU (Base Band Unit)を1カ所に集約して、基地局間連携を容易に行えるようにする方式が提案されています。これがC-RANです。

C-RANには基地局の小型・軽量化が図れるなどの利点があり、すでに一部の事業者で採用されています。現在はセンターに集約されているBBUと基地局のRRU(Remote Radio Unit、復変調や送信電力の増幅を行う装置)との間は個別に光ファイバーでつながれていますが、センターに集約されるBBUの数が増えれば光ファイバーのコストがかさみます。場所によっては光ファイバーが引けないケースも出てきます。FrontHaulを導入することでこれらの課題を解決することができます。

――具体的にはどういう形で使われるのですか。

 2つのソリューションからなっています。1つはDWDMを使って市街地をカバーするループ上の光ファイバーネットワークを構築し、このループ上のノードから近隣の基地局のRRUを収容するものです。これにより光ファイバーを大幅に節約することができます。

もう1つ、光ファイバーが引けない状況に対応するためにFrontHaulでは、数Gbpsの高速データ伝送が可能なEバンド無線でセンターのBBUとRRUを結ぶソリューションも提供しています。

FrontHaulはすでに韓国のLG U+で商用化されていますが、日本でもLTE-Advancedで小セル基地局が多数配置されるようになることでニーズが高まってくると考えています。FrontHaul で構築されるDWDMのネットワークはBBU・RRU間の信号のやり取りだけでなく他のサービスを支援する用途にも活用できますから、大幅なコスト削減が可能になると思います。

図表5 ファーウェイFrontHaulソリューションの特長
図表5 ファーウェイFrontHaulソリューションの特長

――LTE-Advancedの後継となる5G(第5世代移動通信システム)についての議論も始まりました。

 ファーウェイは2009年に5Gの研究開発プログラムを立ち上げ、2013年末には2018年までに5G無線技術の開発に6億ドルを投資すると宣言しました。また5Gのコンセプトを検討するいくつかのプロジェクトに参画しており、欧州のMETIS(Mobile and wireless communications Enablers for the Twenty-twenty Information Society)ではエアインターフェース研究を主導しています。MWCでは、研究施設で5G向け無線技術のプロトタイプを使って115Gbpsのデータ通信速度を達成したことを発表しました。

――ファーウェイでは5Gはどういうシステムになると考えていますか。

 5GではM2M分野をはじめ移動通信が生活に様々なシーンに入り込み、無線ネットワークが非常に広い領域をカバーするようになると思います。

5Gというと、スループットが10Gbps出るといったことに目が行きがちですし、我々もそれを実現するための技術開発を行っているのですが、それだけでは十分ではありません。

図表6 5Gサービスとシナリオ要件
図表6 5Gサービスとシナリオ要件

M2Mの展開が本格化すると全世界で1000億規模のデバイスがネットワークにつながるようになります。その中には通信の遅延に対する許容度大きなものも、非常に厳しいものもある。これを効率的に運用するにはどうしたいいのか。我々は今こうした視点で5Gを考えようとしています。

4G、さらに5Gの時代に向けて、我々はさらに多くの通信事業者のビジネスに貢献できる存在になりたいと願っています。

5月28日から3日間、東京ビッグサイトで開催する「ワイヤレスジャパン2014」の基調講演に、周 明成氏が登壇します。
★お申し込みはこちらから→ http://www8.ric.co.jp/expo/wj/conference.html#X

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