スループットだけでは不十分、1000億の端末が円滑につながる環境を作りあげる通信ベンダートップに踊り出たファーウェイが描くネットワーク戦略

通信インフラグローバルベンダートップのエリクソンを売上高で抜いた中国・ファーウェイが、LTE-Advancedに向けたビジネスで攻勢をかけている。これを支えているのが、意欲的な開発投資と通信事業者との共同開発体制だ。日本法人で通信インフラ事業を所管する周 明成副社長にLTE-Advanced/5G時代に向けた戦略を尋ねた。

キャリアアグリゲーションで2つの世界初を実現

――今年2月にバルセロナで開催されたMobile World Congress 2014では、LTE-Advancedを中心に意欲的な発表を多数行いました。

 MWCでは、LTE-Advancedの基本技術の1つCA(キャリアアグリゲーション、複数の搬送波を束ねて高速化を実現する技術)で世界初となる2つのデモンストレーションを行いました。

1つが、韓国の携帯電話事業者、LG U+と共同で発表した3つの異なる周波数帯域のCAで、450 Mbpsの高速データ通信のデモを行いました。LG U+では今年後半の商用化を計画しています。

もう1つが、ボーダフォンと実施したFDD(送受信で別の周波数を使う方式)とTDD(時分割により同一周波数で送受信を可能にする方式)を組み合わせたCAのデモです。TDDは2.6GHz帯以上の高い周波数帯で導入が進んでいる技術です。これと現行のLTEに広く使われているFDDを組み合わせて500Mbpsの高速データ通信を実現した今回のデモには世界の携帯電話事業者の注目が集まりました。

――TDDは日本では2016年のサービス開始が見込まれている3.5GHz帯のLTE-Advancedでの導入が有望視されています。ファーウェイは昨年末に商用化された中国移動通信(チャイナモバイル)のTD-LTE(LTEのTDD仕様)ネットワークの構築を担うなど、この技術の開発をリードしてきました。

 TDDでは、我々は他社にない強みを持っています。1つは端末からネットワーク設備まで、エンド・ツー・エンドのソリューションを提供できることです。TD-LTE端末は現在10数種類をラインナップしており、これには我々が独自に開発したチップセットが搭載されています。TD-LTEは、ファーウェイの最も重要な戦略の1つであり、研究開発と投資に関しても最優先に注力しています。このことは、ファーウェイが市場と一体となって取り組んでいる業界のエコシステムへの貢献として受け止めていただいていると考えています。

3.5GHz帯のLTE-Advancedのトライアルでは、屋外で700Mbps超、ラボでは1Gbpsの速度が達成され、業界に大きな衝撃が走りました。

英国では2012年からUKブロードバンドが3.5GHz帯でTD-LTEを展開していますが、ファーウェイはこの設備をトータルで提供しています。さらにいえば、現在のところ世界中の3.5GHz帯のネットワークはすべてファーウェイが構築しています。3.5GHz帯のTDDでは我々は成熟したソリューションを持っていると思います。

――日本では年内に4Gシステムとして3.5GHz帯の事業者への割当が決まります。ファーウェイにとって大きなビジネスチャンスです。

 ご採用いただけるかどうかは通信事業者が決められることですが、我々は最も競争力の高いソリューションを提供できるという自信を持っています。

――ファーウェイでは移動通信だけでなく、固定通信向けの製品にも力を入れていますね。

 この分野で我々が特に強みを持っている製品の1つにDWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)があります。すでに100Gbps製品の商用展開では当社が最も多くの実績を持っています。今年の第4四半期には200Gbps及び400Gbpsのラインカードをリリースする予定です。これは既存のフレームの中に入れて使うことができます。1T(テラ)bpsのラインカードのリリースも計画しており、既存のDWDMネットワークで使えるようにしたいと考えています。

図表3 光通信:400G/1T時代に
図表3 光通信:400G/1T時代に

もう1つ、我々が競争力を持っているのがIPコアネットワークの分野です。弊社は20年以上前からIPネットワークの研究開発に取り組んでいます。IP製品の商用化については他社にさきがけた実績があります。たとえば、400Gbps製品の商用化については、9カ月の先行を実現しました。400GbpsのIPコアルーターは昨年1年間で53システムの受注をいただきました。性能面で優れているだけでなく、サイズが他社の半分、消費電力も半分に抑えられています。この2つは急増するモバイルトラフィックを処理するバックホールとコアネットワーク構築において重要なポイントとなります。

図表4 スーパーIPコアネットワーク
図表4 スーパーIPコアネットワーク

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