LTE時代を迎え市場をリードする存在に
――特にLTEで実績が上がっているのはなぜですか。
周 まず、ファーウェイが研究開発にたゆまぬ投資を行ってきたことが挙げられると思います。昨年当社は売上高の12.8%に相当する50億ドル(約5314億円)を研究開発に投じました。従業員15万名のうち7万名以上が研究開発に携わっています。過去10年間の研究開発投資は累計で約250億ドル(約2兆6138億円)に上ります。
――それだけの費用を研究開発に投じられる企業は決して多くはありません。
周 その通りです。これが可能だったのは、当社が国営ではない民間企業、しかもすべての株式を従業員が保有する非上場企業だからだと思います。政府や株主の顔色を伺うことなく、自らの判断で投資が行えるのです。
典型が98年から研究開発に取り組んできたUMTS(3G)です。標準化やライセンスなど様々な要因があり、2005年に欧州でボーダフォンのネットワークを受注するまでこの分野では非常に厳しい状況が続きました。黒字になったのは2007年です。しかし、我々の将来を支える重要な事業であると考え投資を続けてきました。上場企業ではこうしたことは、とても許されなかったでしょう。
ファーウェイ・ジャパン 副社長兼ソリューション&マーケティング本部長の周 明成氏 |
――海外では、ファーウェイが携帯電話インフラ市場に価格破壊をもたらしたといわれます。
周 ファーウェイの主な目的は、通信事業者のTCO削減をサポートすることです。これを達成する鍵となるのが、早くから取り組んできたソフト、ハード両面でのプラットフォームの共用化です。オープンアーキテクチャを活用し様々なネットワーク機器で共用できるソフトウェアプラットフォームを整備することで開発を効率化し、コストの大幅削減を実現しました。お客様のTCOを削減する仕組みを作り上げたのです。
また、通信システムベンダー他社は、IP関連技術などの多くを企業買収によって取得していますが、当社は自ら開発することで、余分なコストをかけることなく短期間でこれらの技術をプラットフォームに統合することができました。
重要なのが、ソフトウェアだけでなくハードウェア、とりわけチップセットの共通化にも力を入れていることです。当社ではネットワーク機器、端末用のチップセットの開発・製造も自社グループで手掛けています。これらのハード・ソフトのプラットフォームを統合することにより大幅な開発期間の短縮が実現できます。グループでチップセットまで手掛けることにより市場全体の動向を理解し、お客様のニーズにいち早く応えることができるという利点も生じています。
――ファーウェイは技術開発や製品展開の速度が非常に早いと評されます。これにも共通プラットフォームの構築が大きく寄与していると。
周 その通りです。さらにもう1つ、当社が市場で必要とされる製品を迅速に開発できる大きな要因として、お客様である通信事業者と共同イノベーションができる仕組みを作り上げたことが挙げられます。現在世界28カ所に共同イノベーション・センターを設け、お客様と共同で技術開発を行っています。これらのプロジェクトを通じて通信事業者が将来に向けてどのようなシナリオを描いているのか、どのような課題を抱えているのかを、早く深く理解することができます。
技術開発分野では、標準化への貢献にも非常に力を入れています。2G(GSM)の時代は、当社は他社に追従する立場でした。3Gの時代に入って他社をキャッチアップすることができました。そして今、LTEの時代になり市場をリードできる存在になれたと考えているのです。