【UCサミット】経産省の平本CIO補佐官が解説「UCの投資効果の測り方」

ユニファイドコミュニケーション(UC)への投資判断はどう行えばいいのか。経産省の平本CIO補佐官が、PRM(業績測定参照モデル)によるUCの投資効果の評価について講演を行った。

企業がユニファイドコミュニケーション(UC)の導入を検討するうえで大きな課題となってきたのが、その投資効果をどう測定するかという問題だ。2010年7月6日に開催された「UCサミット2010」の特別講演において、経済産業省CIO補佐官の平本健二氏は、この“難問”に挑んだ。平本氏によれば、コミュニケーションプラットフォームの投資効果の評価には「PRM(Performance Reference Model:業績測定参照モデル)」が有効だという。

経済産業省 CIO補佐官 平本健二氏

PRMの解説に入る前に平本氏はまず、これまで企業はどのような考え方で、コミュニケーションプラットフォームなどインフラへの投資額を決定してきたかを整理した。

インフラ投資の考え方
これまでのインフラ投資の考え方は「客観的かもしれないが妥当かどうかわからない!」と平本氏

1つめの考え方は「一定比率での投資」だ。これは例えば、IT投資の何%をインフラにかけていこうといった考え方である。2つめは「業界横並びでの投資」だ。例えば、社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)では毎年、業種ごとのIT投資動向を調査している。こうした調査を参考に、「業界他社がこれぐらい投資しているから、うちはこれぐらいでいいのでは」と投資額を決める方法である。3つめは「一人当たりの投資」。一人当たりにするといくらの投資になるかを基準に、投資判断を行う考え方である。そして最後は「トップダウンでの投資」だ。

「1~3番目はある意味、客観的で上司にも説明しやすい。しかし、客観的ではあるが、こうした考え方で投資額を決めることが本当に妥当なのかどうかは分からない」と平本氏は話した。

次に、企業がインフラ投資の事前・事後にどのような評価を行っているかについて語った。JUASの調査によれば、その大部分は満足度調査で、KPI(Key Performance Indicator)を作っているところはほとんどないという。そして、こうした従来の手法について「果たしてこれでいいのだろうかと、皆、不安に思っている」と指摘。さらに、その結果として「中途半端な投資になっている」とした。そこで登場するのがPRMである。

インフラ投資の評価方法
インフラ投資の評価方法は、満足度調査がほとんどだという

PRMは元々、公共機関における情報化投資を評価するため、米国で作られたモデルだ。その思想のベースとなっているのはバランストスコアカードである。ただ、専門家以外には難しいバランストスコアカードに対し、PRMによる分析は経験がなくても容易に行えるという。

PRMのモデルとは次のようなものだ。成果は「プロセス」「人材と組織」「テクノロジ」の価値の連鎖によって生じると捉え、これらすべてが揃わなければ、成果が出ないと考える。「例えば、セキュリティを例にすると分かりやすい」という。情報漏えい事故の原因として多いのは、管理ミスや誤操作、不正な情報持ち出しなどだ。これらは「プロセス」と「人材と組織」に関わるものである。一方、バグ・セキュリティホール、設定ミスといった「テクノロジ」を原因とする事故件数は少ない。つまり、押さえるべきところは、「テクノロジ」ではなく、「プロセス」と「人材と組織」であることが分かる。このようにして、要因分析を行っていくのがPRMの体系だ。

PRMのフレーム
PRMのフレーム

実際にはさらにブレークダウンして要因分析を行っていくが、ユニファイドコミュニケーションに適用する場合の一例として、「プロセス」ではコミュニケーションツールの利用者数/利用率や総残業時間、「人材と組織」では「ヘルプデスクへの満足度や導入教育への満足度、「テクノロジ」では機器の使い勝手や機器の性能に対する満足度などの指標が考えられるとした。

ただし、このPRMの活用により、導入したシステムをより良く活用していくための判断はできるものの、投資額の妥当性については判断できない。では、どうすればいいのか――。

平本氏は「まだ私も解はもっていない。しばらくはコスト削減額の積み上げや、本来は換算不能な効果を可視化していくことで総合的に判断するほかないと思っている」としたうえで、「さらなる検証や事例の蓄積、金額換算できないところの工夫などにより、皆さんと新しい投資判断の仕方を作っていきたい」と講演を結んだ。

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