大手金融機関で加速するSDN採用の動き
3社目は、100カ国以上で営業活動を行う外資の大手金融機関のケースだ。「私と同じような問題意識でSDNについて調べている方は、特に米国の非常に大きな金融機関において、SDNを積極的に採用する動きがあることに気付いているかもしれないが、そうした会社の1社だ」と木下氏は紹介した。
同社は、かなり早い時期にグループ全体向けのセルフサービス型プライベートクラウドを構築するなど、もともと先進技術の採用に積極的な企業。現在もデータセンターの抜本改革という目標に向かって取り組んでいる最中にあるが、そのためのキー技術の1つとしてSDNを検討している。具体的には、クラウド化で変化するトラフィックパターンや、M&Aによるネットワークの変更要求の増加といった課題に、柔軟に対応するための技術としてSDNを評価している。
4社目も金融機関だ。資産保有高が世界最大という同社は、SDNについて「仮想化が浸透するにつれ、いずれは『入れざるを得ない』技術であると理解」し、現在は導入にあたっての注意点を議論しているところだという。
同社が、SDNに一番期待しているのはレイヤ4-7、すなわちファイアウォールやロードバランサーなどの管理の効率化だ。
クラウド基盤は全世界共通だが、セキュリティについては各国別やアプリケーション別になっており、その設定管理が課題となっている同社。これらL4-7について統合管理できる「上位のコントローラがあれば状況は大きく変化する」と期待しているそうだ。このL4-7の運用管理やリソース最適化の問題については、「L4-7を置き去りにして仮想化の議論をしても意味がない」との意見があるなど、同社以外の情報システム部門でも非常に関心が高かったという。
なお、この金融機関からはこんな意見も聞けたという。それは、同社の情報システム部門が「自分たちの仕事のライバルはアマゾン」と考えているということ。
「会社側はもしかすると、『情報システム部門をなくして、アマゾンに全部預けなさい』と言いかねない状況にある。そうした状況のなか、情報システム部門は、自分たちが構築・運用するプライベートクラウドについて、パブリッククラウドとコスト的に競争できるようにしなければ自分のクビが危ない」
自身のクビを守るための技術の1つとして、SDNを検討しているというわけだ。