1人毎月約200~300台のメーター取替作業をどう効率化するか
ガス使用量を計量するだけではなく、ガス漏れの疑いや震度5相当以上の地震を感知した際にガスを自動的に止める保安機能なども備えるガスメーター。家庭用のガスメーターの場合は、10年ごとの取替が定められている(業務用など一部は7年)。
広島ガスでガスメーターの取替作業を担っているのは、専従の約25名からなる現場作業者たちだ。広島ガスは約41万2千戸に都市ガスを供給しており、1人当たり毎月約200~300個のガスメーターを取り替えているが、そこにスマートデバイスを投入した目的は大きく3つあった。
1つめの目的は、「取替作業の効率化」である。
広島ガスでは従来、ガスメーターの取替時期を迎えたお客さま情報などが記載された伝票を、2カ月に一度まとめて現場作業者に手渡していた。現場作業者は、この伝票を持って現場を回り、交換したメーターの社番(固有番号)や検針情報などを記入。お客さまのサインをいただき事務所に持ち帰り、作業報告する。
「手書きですから作業効率が悪いうえ、雨の日や風の日も数多くの紙の伝票を携行しなければなりません。また、伝票には個人情報が記載されていますから、取り扱いにも細心の注意が必要でした」。ほかにも、取り除いたメーターの検針情報がすぐにはシステムに反映されないため、お客さまからの問い合わせに対して即座に回答できないという課題もあった。
さらには、伝票の並び替えが必要なことも、作業の効率化を妨げていた。
現場作業者は地区ごとに担当が分かれており、1人が受け持つエリアは広い。効率的に取替作業をこなすには、近隣の案件をまとめて回る必要がある。そのため、紙の伝票をエリアごとに並び替えながら、訪問計画を立てなければならなかったのだ。しかも、ガスメーターの取替にはお客さまの了解が必要なため、現場作業者の都合通りに取替を進められるわけではない。現場作業者は、頻繁に数百枚もの伝票の並び替えをする必要があった。
手書き伝票ゆえに起こっていたガスメーターの“入れ違い”
2つめの目的は、「作業手順の標準化」である。課題だったのは、複数メーターの同時交換時の起票ミスだ。
同一マンション内の101号室と102号室といったように、同じ場所のメーターを取り替える場合でも、作業マニュアルでは1台ずつ作業するように定めている。しかし、すべて交換してから、その後にまとめて起票を行うことにより、取り除いたメーターと伝票の入れ違い(アンマッチ)が発生する可能性がゼロではなかったという。入れ違いを完全に防止するには、作業手順の標準化をシステム側で徹底する必要があった。
3つめの目的は、「取り除きメーターの管理強化」である。取り除いたメーターはメーカーに送り返し、メンテナンスしてから再使用(リサイクル)する。広島ガスの場合、メーターの使用期間は最長40年。メーカーへ返却する取り除きメーターのチェック作業も従来は伝票ベースだったため、作業が煩雑になっていたほか、担当者がチェックしたかどうかを確認する手段もなかった。