「長い時間待たされることが多い」。銀行の窓口に対して、そんな印象を持っている人も少なくないかもしれない。月末や昼休み、閉店間際など、銀行の窓口が混雑する日・時間帯は大体決まっている。そうした日・時間帯に訪れれば、待ち時間はどうしても長くなる。
もちろん銀行側では顧客満足度向上を目指し、オンラインシステムの強化や取引内容別の窓口の設置など、混雑時であっても待ち時間をできるだけ短縮するための努力が継続しているが、今、タブレット端末「iPad Air」の活用により一層の改善を図ろうとしている銀行がある。ふくおかフィナンシャルグループの福岡銀行、熊本銀行、親和銀行だ。
ロビースタッフの対応力アップで“0線”を強化
ふくおかフィナンシャルグループの戸野川勇次氏によれば、銀行の窓口業務は、顧客と直接対面する「窓口」とそれを支援する「後方事務」に分けられるという。窓口のことは“1線”、後方事務のことは“2線”と呼ばれているそうだ。
銀行業界では、オンラインシステムの改良による1線と2線の連携強化や、1線だけで完結できる業務の拡大などにより、窓口業務をスピードアップさせてきた歴史があるが、「近年は1線、2線の強化に加えて、“0線”に注目が集まっています」と戸野川氏は最近のトレンドについて教えてくれた。ふくおかフィナンシャルグループがiPad Airを配備したのも、この0線である。
ふくおかフィナンシャルグループ 事務企画グループ 部長代理 戸野川勇次氏 |
0線とは、ATMを使って顧客だけで完結する取引を意味する場合もあるが、ふくおかフィナンシャルグループでは窓口の前、ロビーでの顧客対応を指している。「来店したお客様の用件をおうかがいし、必要な書類の準備が整っているかを確認したり、記入していただく書類へ案内したりするのがロビースタッフの役割です」(戸野川氏)
窓口で要望を聞いてから書類の確認や記入を行なうと、窓口での対応時間が長くなってしまう。しかしロビースタッフが用件を確認し、事前に必要書類への記入などを済ませておいてもらえば、全体の待ち時間短縮にもつながるというわけだ。
このように、以前から0線により窓口業務のスピードアップを図っていたふくおかフィナンシャルグループだが、砥綿吉子氏によると次の課題があったという。「各支店で活躍するロビースタッフは、お客様の要望にスピーディに対応できるよう、よく使う資料をクリアファイルやポシェットにまとめて持ち歩いています。しかし、その管理方法はこれまで、それぞれのやり方に任せていました」
ふくおかフィナンシャルグループ 事務統括部 部長代理 砥綿吉子氏 |
こうした属人的なノウハウに頼る資料管理から、統一された管理体制へと移行し、ロビースタッフの対応を一定の品質に揃えたうえで向上させる――。そのためのツールとして選んだのが、iPad Airだった。