NaaSでユースケース拡大へ
NTTドコモビジネスは今月、新ブランド「docomo business APN Plus powered by IOWN」をリリースし、現在提供中の「帯域固定型プラン」に加え、100Mbpsから10Gbpsまでの帯域を柔軟に変更できる「NaaS(Network as a Service)プラン」を新たにラインナップした。帯域固定型プランでは今後、800Gbps/1.2Tbpsの帯域も提供予定だ。これにより、APNの活用領域はさらに広がっていくと同社 同部 第2サービス部門 第1グループ 担当課長の小島圭子氏は見る。

NTTドコモビジネス プラットフォームサービス本部 クラウド&ネットワークサービス部 第2サービス部門 第1グループ
担当課長 小島圭子氏
帯域固定型プランのユースケースの1つが、「GPU over APN」だ。従来のAI学習では、複数のGPUを単一DCに集約して運用するのが主流だった。しかし、大量のGPUを調達するには時間を要するうえ、ラックスペースや電力供給能力にも制約がある。こうした背景から、複数DCのGPUサーバーをAPNでつなぎ、1つの巨大なコンピューティングリソースとして活用する動きが今後広がっていくだろう。
図表2 docomo business APN Plus NaaSプランのユースケース

こうした未来を見据え、NTTドコモビジネスは昨年10月より、約40km離れた三鷹-秋葉原間を、今年3月には川崎も加えた3拠点をIOWN APNで接続し、メタが開発した大規模言語モデル(LLM)「LlaMa 2 7B」や、NTT版独自LLM「tsuzumiモデル7B」の分散学習の実証を行っている。
拠点間の接続には100GbpsのIOWN APNを用いているが、「AIモデルの巨大化やAIエージェントが本格普及すると、100Gbpsや400Gbpsでは将来的に足りなくなる可能性が出てくる」と小島氏。今後提供予定の800Gbps/1.2Tbpsの帯域固定型プランにより、企業のAI活用をさらに後押ししたい考えだ。
NaaSプランは、「必要な時にWebポータル上から帯域を変更でき、利用量に応じて料金を支払う従量課金型である」(小島氏)点が特徴だ。
APNがNaaSサービスとして利用できるようになることで、例えば期間限定でAI学習を行う場合や、AIエージェントの活動量を一時的に増やすようなケースでも、その期間だけ帯域を柔軟に拡張できる。これにより、活動量が落ち着いた期間には余分な帯域を確保する必要がなく、結果として全体のコストを抑えられる。
また、短期間でAIインフラを増強したい場合、数カ月で構築できるコンテナ型DCを増設する方法もある。ただし、これに伴うネットワークの整備は、コンテナ型DCの構築よりも時間を要する場合があると小島氏は指摘する。NaaSプランであれば、「Webポータル上から容量を追加するだけの数分で対応が可能」だ。
建設・医療に不可欠な「確定遅延」
そしてAPNの最大の特徴は、遅延を可視化・制御できる「確定遅延」にある。例えば建機の遠隔操作では、遅延が不規則だと、機械の動きと手元の感覚にズレが生じ、思うように操作ができないという問題点が生じる。一方で、「遅延を一定にできれば、『この操作をすれば、このタイミングで建機が動く』と感覚的に掴めるようになり、遠隔操作の習熟が早くなる」と佐々木氏は説明する。
確定遅延のニーズはまだ限定的だというが、遠隔手術ロボットなどへの応用も見込まれる。まずはエンタメや放送用途で欠かせない技術としての地位を確立し、その後、医療や建設といった他業界へ波及すると予想される。











