「欧州はUpper 6GHzを5G/6Gに」 ノキアが解説する世界の周波数動向

6G周波数の有力候補として注目を集めている「U6GHz(Upper 6GHz)」。この6.4~8.4GHzの帯域を確保するため、国際移動通信(IMT)とWi-Fiとの間で綱引きが続いているが、欧州は6.425~7.125GHzの700MHz幅をIMTに割り当てる方向へと舵を切る。欧州に追随するアジア諸国、同帯域をWi-Fiに割り当てた米国の動きが注目される。

3事業者に200~400MHz幅を割り当て可能

Upper 6GHzを確保すると、6G時代のミッドバンドはどこまで拡張できるのか。下の図表は世界各国の状況を整理したものだ(日本は右から5つめ)。

国別のミッドバンド獲得見込み

国別のミッドバンド獲得予想

説明会に続いて開催された「6Gの開発に関する技術カンファレンス」で登壇したノキア ストラテジー&テクノロジー事業部 バイスプレジデント&CTOのアリ・キナスラティ氏は、「6Gシステムでは、各国で3つの通信事業者がそれぞれ400MHz程度の新規スペクトラムを獲得し、合計1.2GHzを確保することが目標とされている」と説明した。

6.425~7.125GHz(オレンジ)を最大限に割り当てる方向の「ブラジル、メキシコ、UAE、インド等は、(7.125~8.4GHzと合わせて)各通信事業者に400MHz程度の帯域を割り当てることができる見込み」と高岡氏。同帯域のうち7.025~7.125GHzの割り当てを検討している日本も、7.125~8.4GHz(青)を加えると「3オペレーターに対して200~300MHz程度の帯域幅が割り当て可能だ」。

一方、6.425~7.125GHzをすべてWi-Fiに割り当てた米国とカナダ(表の左から3つ)は、その目標達成が厳しい状況にある。

欧州は北米とは真逆の「IMTに全部割り当て」

そんななか、注目されるのが欧州の動きだ。

高岡氏によれば、周波数政策を議論する「欧州無線スペクトラム政策グループ(RSPG)が先週、この帯域(6.425~7.125GHz)をIMTに割り当てる意見書をEUに提出することを決定した」。年末までに「最終意見」を発表する予定だ。

欧州の状況

U6GHzをめぐる欧州の状況

キナスラティ氏も、「ここ数週間で欧州諸国が真剣に検討し始めている。先週、ドイツがこの周波数を完全にIMT用途にすることを決定した。欧州では現在、各国が順次このオレンジ色の6.425~7.125GHz帯域をIMTに割り当てる方向で動いている」と、北米とは真逆の動きを見せていることを紹介した。

日本では、6.425~7.125GHz帯域についてWi-Fiへの追加割り当ても検討されているが、欧州の動きを受けて今後どのように議論が進むか注目される。なお、アジアには欧州の動きに追随する国が少なくない。ベトナムはこの10月、IMT向けに6.425~7.125GHz帯全体を割り当てる新たな国家無線周波数割当計画を承認。「タイもこれに追随する可能性が高い」(高岡氏)という。

日本におけるU6GHzの状況

日本におけるU6GHzの状況。帯域のほとんどが固定無線(FS)や衛星通信などで使われているため、周波数共用や移行が必須となる

「Wi-Fiとの周波数共用は無理」

となると、もう1つ気になるのが、IMTとWi-Fiで6.425~7.125GHz帯域の共用が可能かという点だ。

世界各国の通信事業者とU6GHzのトライアルを実施してきたノキアは、英BTと今年5月に、IMTとWi-Fiの干渉についてフィールドトライアルを実施している。

結論から言えば、IMTとWi-Fiの「周波数共用は無理」と高岡氏。Wi-Fiをアクティブにした状態ではIMTのスループットはほぼゼロになる(下図表・中央のグラフ)。

U6GHzのIMT/Wi-Fi干渉検討トライアルの結果

IMT/Wi-Fi干渉フィールド試験の結果

一方、Wi-Fiへの干渉の影響を見ると(同・右のグラフ)、IMTの端末がアイドル状態のときはWi-Fiのスループットが若干落ちる(95%)だけだが、アクティブになったとたん「Wi-Fiの速度はほぼ半分(55%)に落ちてしまう」。

この共用検証の結果も、先のRSPGの議論に大きく影響したようだ。欧州が同帯域をIMTに割り当てる結論を下した一因になったと、ノキアでは分析している。

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