“新幹線”が東名阪結ぶ
東海道新幹線を運行するJR東海は、メタル線の老朽化を受け、1998年に東京~新大阪間で光ファイバー網を整備し、この光ファイバー心線の提供を2024年4月に開始した。
同社の竹中宏顕氏によれば、事業化のきっかけは「コロナ禍だった」という。「旅客輸送量の変動に左右されない安定的な収益源として、2022年7月から事業化の検討を始めた」

東海旅客鉄道 事業推進本部 課長代理 竹中宏顕氏
同社は電気通信事業者ではないため、物理的な生芯をIRU(Indefeasible Right of Use:利用権譲渡契約)の形態で電気通信事業者に貸し出す。なお、提供する光ファイバーは東海道新幹線の東京~新大阪間のみであり、在来線区間の提供は行っていない。
東海道新幹線区間の最大の特徴は、新幹線が超高速で走行するため、東阪間を最短距離に近い直線ルートで結んでいることにある。光ファイバーも最短距離で接続しており、光伝送ロスが少ない。また、鉄道保守要員が日々メンテナンスを行う堅牢な鉄道構造物上に敷設されており、地平に比べて災害や事故の影響を受けにくい。こうした高い品質がなによりの長所だ。
現在、東京、名古屋、新大阪の各駅に接続ポイントを開設。利用する電気通信事業者は駅構内の機器室まで自社ファイバーを延伸し、JR東海のネットワークと接続する。
他社との接続は、JRWONと近鉄ケーブルネットワークに対応。また東京では丸の内ダイレクトアクセスに接続している。首都圏および関西圏の都市や、海底ケーブル陸揚げ局との接続に利用可能だ。

東海道新幹線の光ファイバー心線 貸し出しイメージ(提供:JR東海)
“四重化”への現実策
光ファイバー心線を提供する各社は、冗長化ルート確保へのニーズの高まりを指摘する。二重化はもとより、外資系事業者を中心に三重化・四重化の要望もあるという。キャリア系・電力系とは異なるルートを持つ鉄道系光ファイバーは、これらの多重経路化の手段を提供できる重要な存在だ。
鉄道事業者の光ファイバーは、鉄道同様、日本を支えるインフラとしてその価値をより高めていくだろう。












