ソフトバンクが6G候補周波数を検証「7GHz帯のポテンシャルは高い」

次世代の移動体通信規格「6G」の候補周波数の1つとして注目が集まっている「7GHz帯」。5Gで使われているSub6と特性が似ていることから、5Gで蓄積した知見を活かしてエリア展開できるという期待も高い。その7GHz帯について、ソフトバンクがノキアの協力のもと屋外実証実験を行った。5Gで使われている3.5GHz帯との比較で見えてきたものとは。

3.5GHz帯と比較した7GHz帯の特性とは

そもそも、7GHz帯とはどんな特性を持つ電波なのか。

今回の実証を手掛けたソフトバンク 先端技術研究所 先端無線統括部 6G準備室 室長の矢吹歩氏は、周波数特性とアンテナの特性の2つの視点で、3.5GHz帯との違いを説明した。

理論上、7GHz帯は3.5GHz帯と比べて、見通し内(LOS)では6dBほど伝搬損失が大きく、見通し外(NLOS)ではその差が約10dBとなる(下図表)。

伝搬特性の比較

周波数特性の比較

一方、アンテナについては、7GHzは電波の波長は4.3cmと3.5GHz帯の半分であるため、アンテナサイズが半分になる。「同じアンテナ面積なら、7GHz帯の場合はアンテナ素子の数が4倍。これにより、LOSの伝搬損失(6dB)をアンテナ利得で補完できる」という。

アンテナの特性の違い

アンテナの特性の違い

矢吹氏によれば、7GHz帯が「Sub6と同等に使えるのではないか」と言われている理由はここにある。では、実際に人口密集地で電波を発出してみた結果はどうだったのか。

「3.9GHzよりうまく使える」可能性も

比較検証は、下図表の状態で行った。

基地局設置の条件

基地局設置の条件

7GHz帯の中心周波数は7.23GHz。3.9GHz帯も7GHz帯も、帯域幅は100MHz幅で、どちらもMassive MIMO対応基地局を使用した。

また、アンテナ利得は3.9GHz帯が23dBi、7GHz帯が30dBiと差があり、そのままでは7GHz帯のほうが有利となるため、送信電力を調整することで同等の条件で比較検証した。3.9GHz帯の100Wに対して、7GHz帯は30Wに抑制。実際に商用利用する際は送信出力を高めることができるため、今回の実証よりも電波が飛ぶことになる。

7GHz帯のエリア測定結果を示したのが、下の図表だ。

7GHz帯のエリア測定結果

7GHz帯のエリア測定結果

受信電力(左)でみると、見通し内(マップ上の点線で囲んだ部分)は強度が高い(緑)が、見通し外はオレンジや赤(強度が弱い)が目立つ。

だが、意外なことに、通信品質(SINR:信号対干渉波雑音比)でみると、右マップのように見通し外でも良好な通信品質が得られていることがわかる。「7GHz帯でも十分にエリアが確保できている。圏外はほぼ存在しない」と矢吹氏。圏外となる-120dBm以下の場所は、検証エリアの0.5%しかなかった。

さらに、同氏が注目点として挙げたのは、MIMOが効果的に機能する10dB以上のエリアが全体の23%も存在することだ。ユーザーに対して快適な通信環境を提供できる可能性が高く「7GHz帯はかなり使いやすい」と話した。

ソフトバンクが分析する「高いポテンシャル」の理由

湧川氏も、「見通しのある場所ではシミュレーションよりも(電波が)飛んでいる」と、7GHz帯のポテンシャルを評価した。その理由の1つとして挙げたのが、都市部との相性の良さだ。

統計的な分析の結果、7GHz帯は3.9GHz帯と比べて2dB程度、損失が少ないことがわかったという。その要因について、都市部の高いビルに囲まれた環境では、電波が反射しながら遠くまで飛ぶためと推測。より直線的に飛ぶ「7GHz帯はビームが細いので、きれいに反射して飛ぶ。だから干渉が少ない」と湧川氏は見解を述べた。

7GHz帯の高いポテンシャルを評価

ソフトバンクは、7GHz帯の高いポテンシャルに期待している

6Gでは、5Gよりもさらに広い周波数幅を使った大容量通信が期待されており、その意味でも、まとまった帯域幅が取れる可能性がある「7GHz帯は、効率的に6Gを展開するために重要だ」と矢吹氏はまとめた。今後は、7GHz帯だけでなく、「8GHz帯やさらに高い周波数でも実験を行い、6Gの導入に寄与していきたい」と展望した。

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