IoE時代のネットワークの条件とは?
IoEの実現にあたって、ICTは必ずしも主役ではない。「ITやテクノロジーを主語にしてはいけない。あくまで主語は人や企業など。それらをイネーブルにするのがITやテクノロジーの役割だ」というのが平井氏の考えだが、その一方でやはりネットワーク自身もIoE時代に向けて変わる必要はある。
言うまでもなく、スマートデバイスの普及を主因にしたトラフィック急増は今、非常に大きな課題となっている。だが、IoEの時代に入ると、さらに今度は爆発的な数のデバイスがインターネットにつながることになる。
「トランザクションやイベント数の増加に対応するため、サービスプロバイダーは新しい次元のネットワークを必要としている」と米シスコ シニアバイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャー サービスプロバイダーネットワーキンググループのスリヤ・パンディティ氏は説明した。
IoE時代に求められるネットワークの姿 |
そして、IoEに最適化して設計された新製品として発表されたのが「Cisco Network Convergence System(NCS)」である。IoEを実現するには、ネットワークの帯域幅を拡張するだけではなく、IoEで発生する兆単位のイベントをプログラマブルに処理する必要があるが、NCSなら円滑に行えるという。
NCSの概要 |
NCSは、Cisco CRSとASRをを結合したネットワークファブリックとして機能する製品だ。1チップに40億個のトランジスターを搭載した最新ASIC「Cisco nPower X1」を採用し、スロット当たり1Tbpsを実現できる。また、シスコのSDNアーキテクチャであるCisco ONEの一部として稼動する。
「今のSDNはアプリケーションから遠い位置にある」
ネットワークをプログラマブルに利用できることは、IoEにおいても大切な要件となるわけだが、「世の中で言われているSDNは、どうもネットワークリソースやインフラの自動化を目指しているのではないか。実はアプリケーションから見ると、ネットワークは引き続き遠い位置にある」と指摘したのは、専務執行役員 テクノロジーソリューション&アーキテクチャ統括の木下剛氏だ。
同氏は、「真のSDNが目指すのは“ネットワークとアプリケーションのリアルタイム連携”」としたうえで、アプリケーション間のAPIが重要と訴えた。
現状のSDNでは、OpenStackなどのクラウドオーケストレータ間、OpenFlowなどのコントローラとネットワーク機器間のAPIの議論は盛んに行われている。ところが、肝心のアプリケーションとの間については見落とされているのではないか、というのが木下氏の主張である。
真のSDNとはネットワークとアプリケーションのリアルタイム連携 |
シスコでは今後、「Application Centric Intelligent Network」という新たなアーキテクチャフレームワークの下、ネットワークとアプリケーションのリアルタイム連携を実現するためのAPIの標準化などをリードしていく考えだという。
2020年の東京五輪は日本のイノベーションのショーケースに
IoE、あるいはM2MやInternet of Thingsに対しては、「なかなか期待通りに進展しない」という思いを抱いている人も多いだろう。シスコの3段階発展モデルに沿っていえば、今はまだ「第一段階」にある。
それが第三段階にいつ突入するかについての言及はなかったが、ムーア氏と平井氏が揃って口にしたのは、東京開催が決定した2020年のオリンピックへの期待だ。
「2020年の東京オリンピックは、日本のイノベーションのショーケースになると確信している」(ムーア氏)
「2020年の東京オリンピックにおいて、シスコが担える役割は非常に大きい」(平井氏)
この日の会見では、IoE時代に求められるネットワークの具体的な姿がまた1つ明確にされたが、ぜひ7年後までに、日本が先頭を切ってIoEの第三段階に突入していてほしいものだ。