マイクロソフトのユニファイドコミュニケーション(UC)基盤「Office Communications Server」(OCS)の現行バージョン、2007 R2が昨年5月に国内発売されてからまだ1年。早くもその次期バージョンの開発が佳境に入っている。
3月24日、マイクロソフトは米国フロリダ州で開催されたイベント「VoiceCon Orlando 2010」で、次期バージョン「Wave14」(開発コードネーム、以下W14)を初披露した。
UC市場のリーダーの1社としての地位をすでに確立しているマイクロソフトは、UCをどこまで進化させたのか。同社日本法人の桑原智宏シニアプロダクトマネージャの解説をもとに、現在明らかにされているW14の主な新機能について見ていく。なお、画面写真はすべて開発中の英語版のものだ。
マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部 ユニファイドコミュニケーショングループ シニアプロダクトマネージャ 桑原智宏氏 |
専門家を素早く検索する「スキルサーチ」機能
OCSユーザーであれば、OCSのクライアント「Office Communicator」(以下OC)のW14版を見て、すぐにR2との違いが分かるはずだ(写真1)。W14では、名前の横にその人の写真を表示できる。写真付きであれば、同姓同名の人でも間違いにくいし、より直感的にコンタクト先を選択可能だ。写真はSharePointに登録されたものを持ってくるかたちである。
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写真1 Office Communicator Wave14の開発中の画面。写真が新たに表示可能になったほか、離席時間も分かるように。また、この画面はスキルサーチ機能を使って「financial bluewater」というキーワードで検索した例だ |
また、写真1を見ると、もう1つ気付くことがある。それは名前右横の「Away 5 mins」との表示だ。従来もPC操作がない状態がしばらく続くと、自動的にそれを表示する仕組みはあった。W14では、さらに「Away 5 mins」「Away 10 mins」とPC操作がどのくらいの時間ないのかまで分かるようになった。5分だと「ちょっと席を離れているだけかな?」、10分だと「外出したかな?」など、プレゼンス情報が詳細になるほど、コミュニケーションは円滑になる。
一見するだけでも、これだけの新機能を発見できるが、もちろんもっと多くの特徴をW14は有している。次に紹介するのは「スキルサーチ」機能だ。これまでもOC上で個人名やグループ名による検索は行えたが、W14ではSharePointと連携し、スキル、携わっているプロジェクト、興味から、社内の専門家などを探せるようになった。例えば「法務」や「legal」と入力すれば、法務担当者が検索結果として一覧表示されるといった具合だ。「単なる電話帳でいいのであれば、IP-PBXでもいい。だが、ユーザーはそれ以上のものを求めている」と桑原氏は話す。
ロケーション機能の搭載も大きなトピックである(写真2)。言うまでもなくプレゼンスはUCのコアとなるものだが、今回、メンバーの所在地まで分かるようになった。IPアドレスのサブネットからユーザーの現在地を把握し、自動表示する。なお、ロケーション情報に対応するのに伴い、北米のみではあるが、OCSから緊急呼を直接かけることも可能になる。従来OCSから緊急呼をかけるにはゲートウェイを介す必要があった。
写真2 プレゼンス機能が強化され、さらにロケーションもOffice Communicator上で分かるようになった。プライバシー設定により、自分のロケーションを誰に見せるかをユーザー側で設定することもできる |
Outlook 2010、Exchange 2010とOCS 2007 R2の組み合わせで、すでに実現可能な機能であるが、コンタクトカードも生産性能向上に大いに貢献しそうな機能だ(写真3、4)。これはコンタクトを取りたい人のプレゼンス情報などをデスクトップ上に貼り付けておける機能。常にデスクトップ上に表示しておき、ステータスが「Available」になったら、すぐコンタクトするといった使い方ができる。
写真3 これがコンタクトカード。デスクトップ上に貼り付けることができ、連絡を取りたい相手のプレゼンスを常にチェックできる |
写真4 コンタクトカードの詳細画面。「Calendar」の欄には「Free until 5:00 PM」の表示が。Outlookと密に連携可能なOCSだからこその機能だ。「Location」を見ると、現在ベルリンにいることも分かる |
また、これまでボイスメールの再生はOutlook上から行う必要があったが、OC上で再生しリダイヤルするなどの操作が行えるようになった。さらにOC上でのPowerPoint共有など、Officeとの一層緊密な連携のもと、生産性を向上できるようになっている。