「私がiPhoneを手にしたのは2008年だが、ものすごい危機感を抱いた。なぜならiPhoneなどにより人々の暮らし方はどんどん変わっていっているのに、ANA自身の仕事の仕方を見ると変わろうとしない、変化がなかったからだ」
このままでは、「街の人々のほうが変化が早くて、お客様に追い抜かれてしまう」――。そう危機感を募らせた全日本空輸(ANA)取締役副社長の岡田圭介氏は、業務プロセス改革に乗り出すが、その1つとして推し進めたのがiPadを活用した現場業務のワークスタイル変革だった。
2013年7月23日~24日に開催されたソフトバンクの法人向けプライベートイベント「Softbank World 2013」での岡田氏の講演から、ANAのワークスタイル変革について紹介する。
スタッフの8割が現場の職場に「iPadを投げ込んだ」
「私どもの会社はほとんどすべてが現場。キャビンアテンダント(CA)、フロント係員、パイロット、整備士と、多くの人間が毎日現場で働いている」
ANAのスタッフの構成比率 |
航空会社であるANAはスタッフの80%が現場業務と、まさに現場で成り立っている職場である。それだけに現場スタッフのワークスタイルはきわめて重要だが、その働き方には長い間、変化がなかったという。
「飛行機はどんどん新しくなって、新しい技術が入ってきているが、現場の仕事の仕方は非常に保守的。おそらく本質的なフィロソフィーや仕事のプロセスは、この50年くらい変わっていなかった」
このような職場にANAは「iPadを投げ込んだ」わけだ。2012年4月のCAへの導入を皮切りに、パイロット、整備士とANAはiPadの導入を広げていくが、その効果はどうだったのだろうか。
CA、パイロット、整備士にiPadを導入しているANA |
岡田氏はスライドに写ったCAの写真(上記スライド)に触れて「この写真では、とてもにっこりしているが、本当ににっこりしている。彼女たちにはずいぶん好かれました。なぜなら、長い間変化のなかった職場に、iPadという道具が来たからだ」として、その効果について説明し始めた。