NTTがマルチAIエージェント技術を開発、「人間と同じく対話して協調」

より複雑なタスクをこなせるように進化し続けるAI。そのアプローチの1つとして注目を集めているのが、複数のAIエージェントが連結してより大きな業務プロセスを代行する「マルチエージェント」だ。NTTは今回、AIエージェントが対話を通じてコミュニケーションを取り合い、協調してタスクに取り組む自律協調型の基盤技術を新たに開発した。キーポイントは、協働作業において人間が行うプロセスを模倣した点にあるという。

人間の認知構造を模倣し「知識を抽象化して管理する」

1つめの「知識管理」は、エージェントが他のエージェントとの会話を通じて知識を取得することを指す。

人間の認知構造を模倣した知識管理

人間の認知構造を模倣した知識管理

会話からエピソードを抽出し、要約・整理を行うことで知識を獲得。知識はスコアリングし、階層的に整理することで、次の会話に活用する。薮下氏によれば、「知識を抽象化して管理することで、再利用性を高めている」点がポイントという。

この知識管理は人間の認知構造を模倣したものだというが、2つめの「協働創造スキーム」もまた、人間社会における協働創造プロセスを模倣した3段階のフェーズで構成されていると薮下氏は説明した。

リーダー、評価者、専門家を交えて会議

第1フェーズは「チーム会議」。サブタスクを受け取ったエージェントは、そのサブタスクに関する知識を構築するとともに、「チームタスクに対する意見を出す」。ランダムに選ばれたリーダーがそれらの意見を統合してチームタスクを定義し、評価者が、チームタスクがきちんとすべてのサブタスクをカバーしているのかなどを確認。そうして設定されたチームタスクを受けて、各エージェントが知識をさらに更新する。

第1フェーズ:チーム会議

第1フェーズ:チーム会議

第2フェーズ「ブレイクタイム」では、チーム会議で各エージェントが感じた課題に関する知識を持つ専門家エージェントを生成する。課題を感じたエージェントがその専門家と対話することで新たな知識を獲得し、次の会議へと移行する。

第2フェーズ:ブレイクタイム

第2フェーズ:ブレイクタイム

最後のフェーズは「チーム生産会議」だ。各エージェントはサブタスクの内容と自身が持つ知識に基づいてアウトプットを提案。それらをリーダーがまとめ上げ、評価者が「全エージェントの提案が生産物に入っているかを確認して、最終的な創造的成果物としてまとめる」(薮下氏)。

今後は、人間とAIの協調にもフォーカス

説明会では、ACTの評価を行った結果、既存の手法を上回る成果を確認したことも報告された。

「SPP」と呼ばれる従来のマルチエージェント手法との比較においては、多様かつ正確な回答を正しく統合できたかどうかを測定。ACTは平均14.4%の精度向上が見られたという。

さらに、過去のタスク解決時に蓄積した知識を再利用したACT+では、平均で17.2%のタスク解決精度向上を達成。知識の再利用が解決精度の向上に貢献することを確認した。

また、こうした定量的な評価だけでなく、ACTとSPPがそれぞれ創造した生産物の質をLLMと人間が評価する定性評価も実施している。SPPが、各エージェントが実施したサブタスクの結果を単に羅列しているのに対し、ACTは詳細情報や各エージェントの検討結果を考慮して統合し、一貫性、実現性、具体性のある多角的な提案を生成できるとの評価を得ているという。

薮下氏は今後の展望について、人間とAIの協調によるさらなる創造性の発揮にフォーカスすると話した。

今後の取り組み

今後の取り組み

具体的には、人間がAIエージェントの出力に対して行った改善要求や方向修正を、最終的な成果物や中間成果物に反映させる能力を実現することを目指す。人間の意図をAIが組み上げられるようにすることが目的だ。2025年度中にPoCの実施を予定している。

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