M2M用の機器や装置、端末に組み込まれる通信モジュールの低価格化、高機能化が進んでいる。
現在は、1モジュール当たり数千円程度まで価格が下がってきた。加えて、従来は数十から数百kbpsだった通信速度も、KDDIからCDMA 1X WIN対応やWiMAX対応モジュールが登場し、下り数Mbpsから十数Mbpsで使える環境が整ってきた。センサー情報等の微量なデータを扱うだけでなく、監視カメラやデジタルサイネージなどの動画像を扱う領域にもM2Mが利用できるようになった。
また、機器から送信されるデータをTCP/UDPプロトコルに変換する機能を備えるものもある。ユーザー側でTCP/UDPスタックを持つ必要がなく、開発コストの抑制につながる。そのほか、無線経由で回線の開通・停止を行う機能も、M2Mを利用しやすくするものだ。
ドコモも3月に新モジュール「FOMA UM03-KO」を投入した。特筆すべきは2点。1つは、Javaアプリ実行環境をモジュール内に搭載したことだ。
従来、通信モジュールは主にデータの送受信のみを担い、ユーザー側が機器内にアプリ実行用のCPUやメモリ、OSを用意する必要があった。データを収集するセンサー等から通信モジュールにデータを渡すには、周辺回路の設計やアプリ開発などの手間がかかり、ノウハウを持つ企業でなければ組み込み開発は容易に行えなかった。UM03-KOはこれらを内蔵することで、アプリの開発や追加を容易にする。
2つ目は、M2M関連機器で汎用的に使われているシリアル通信規格、SPI/I2Cの標準インターフェースを搭載したこと。これも1点目と同様、組み込み開発を容易にするためだ。
加えて、価格も従来機種の5割程度となる見込み。ドコモの高原氏は、「これまでの産業機器向け以外にも、コンシューマ向け機器への組み込みを促進できる」と期待する。
入口にも出口にもなるスマホ
スマートデバイスの普及もM2M市場の推進力となり得る。スマートデバイスは、センサーからの情報を取り込み、携帯網へ送る中継役としても使えるからだ。
また、機器から得られるデータと、スマートフォンから取得した人の行動履歴を組み合わせることで、M2M活用の幅を広げられる。例えば、クルマの情報を得るだけでなく、降りた後の行動をスマートフォンのGPSデータ等で追跡する。両方のデータを合わせれば、M2Mで重要な「データの継続性」が実現できるのだ。
一方、M2Mで収集したデータの分析結果を閲覧したり、機器を遠隔操作する端末としても、モビリティ性に優れたスマートデバイスは活躍する。さらには、M2Mで得られたデータを活用したサービスを提供する“受け手”としても優れている。先のカーテレマティクスを例にすれば、クルマの通行量データから分析した渋滞予測をスマホに発信したり、運転者に対して近隣の商業施設で行われているセール情報を提供するといった使い方が考えられる。
今や誰もが持ち歩くほど普及したこの便利な端末をいかに活用するかも、M2Mを活用した新ビジネス創出の鍵となりそうだ。