NTTは27日、バイオーム、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェア、NTTデータ、NTTドコモの5社とともに、衛星画像と生物データを活用した植生および生物の広域推定技術の開発に着手したと発表した。生物多様性保全を目的に、企業や自治体の「ネイチャーポジティブ戦略」策定を支援するソリューション開発を目指す。
この取り組みでは、NTTグループが保有するリモートセンシング技術や衛星画像解析技術と、バイオームが提供する国内最大級の生物データベース「BiomeDB」(850万件超)を組み合わせることで、広域かつ継続的な生物多様性モニタリングの実現を目指す。
実証のイメージ
背景には、生物多様性の急速な劣化と、自然資本への依存度の高さがある。世界のGDPの約半分にあたる44兆ドルが森林や土壌など自然資本に依存しており、生態系の保全は喫緊の課題とされる。2022年の「昆明・モントリオール生物多様性枠組」採択以降、世界的にネイチャーポジティブの潮流が加速しており、日本でも「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」が策定されている。
今回の実証では、自治体や企業が保有するフィールドデータ、バイオームの生物データ、NTTデータの高解像度衛星画像「AW3D」などを組み合わせ、特定地域の植生や生物の種類・分布状況を推定する。実証は2025年1月からNTTドコモの「ドコモ泉南堀河の森」(大阪府)、4月からはアサヒグループジャパンの「アサヒの森」(広島県)にて順次実施される。
NTTはプロジェクト全体を推進し、NTTコムウェアが解析・検証、NTT Comがフィールド実証とサービス検討などを担う。さらに、NTTドコモ・ベンチャーズは今回、NTTグループとの連携強化を目的にバイオームへの出資を実施。今後は、自治体のランドスケープ戦略や企業の統合報告書作成支援など、具体的なビジネスユースケースの検討を進める。
各社は「高カバレッジ・高精度な生物多様性プラットフォーム」の実現を通じて、持続可能な社会に向けた価値創出を図る考えだ。