――日本の携帯キャリアが抱える課題を、どう捉えていますか。
タカラ エンドユーザーが期待する要素は3つあります。データ通信の高速性と、モバイルサービスがどこでもつながる環境、そして様々なアプリケーションが使えることです。
携帯キャリアはすべてLTEサービスを開始しており、1つ目の要素であるスピードは改善しているとユーザーから評価されていると思います。最大の課題は、高速なネットワークをできるだけ早期に構築することです。これは、主要キャリアすべてにソリューションを提供しているノキア シーメンス ネットワークス(NSN)の課題でもあります。
インストレーションの容易性が重要であり、我々はその点でも優位です。NSNの基地局はフレックスなモジュールから作られており、約2㎡程度と小型です。他社製品に比べて設置が簡単に行えます。
ノキア シーメンス ネットワークス 代表取締役社長のJP・タカラ氏(右)(JP Takala) Nokia Siemens Networks研究所 無線システムパフォーマンス特別研究員のハリー・ホルマ氏(左)(Harri Holma) |
「1GB per Day」への解とは
――トラフィックの増大に対応していかなければならないキャリアに対して、NSNは、どのような道筋を示しているのでしょうか。
ホルマ LTEからLTE-Advancedへの進化によって、現在のセルサイズと設備を活かしつつパフォーマンスを改善できる余地はまだまだあります。この方向性には、低コストかつスピーディに展開できるというメリットがあります。そして、次の段階ではスモールセルに焦点が移ります。
現在のモバイルデータ使用量は、1人当たり1カ月で約0.8GBですが、2020年には1人のユーザーが1日に1GBを使用すると予測しています。この「1GB per Day」に対応するには、複数の技術と製品を組み合わせたソリューションが必要になります。
マクロセルでカバレッジを広げつつ、その一部としてスモールセルを使うことでキャパシティの厚みを持たせることができます。ここで特に重要なのが、異なる2つのレイヤではなく、両者をインテグレーションした単一のレイヤでネットワークを運用することです。また、LTEと無線LANを連携させるソリューションについても開発を進めています。
――国内では、KDDIがすでにスモールセル(同社は「ピコセル」と呼称)を展開しており、現時点では主にマクロセルでカバーし切れない“隙間”を埋めるかたちで使用しています。
ホルマ 今後は、スモールセルでキャパシティを高める使い方が主流になるでしょう。トラフィックの増加はあまりに早く、マクロセルだけでは容量が不足してしまいます。基地局は今後ますます小型化し、テレビのリモコン程度の大きさの製品も可能になるでしょう。展開はさらに容易になります。
さらに、SON(Self Organizing Network)も重要です。基地局側で自動最適化することで、接続の途切れをなくしたり干渉を回避するといった効果がありますが、無線ネットワークのキャパシティを増加させるこうした新技術の実装を進めています。これらの取り組みによって、スモールセルはすでにコスト効率の良い実用的なソリューションとなっています。