ボトムアップで皆が「ハラオチ」するワークスタイル変革を
佐藤総合計画では主任以上の所員約200名に現在iPhone 5を貸与しているが、これも正解だったという。ほとんどの所員が同じスマートフォンを持つことで、社内のコミュニケーションも非常に活発化したからだ。
「『このアプリは便利だ』『使い方をちょっと教えてくれない?』など、大変にぎやかです。やはり一部の人に配るだけでは活用が広がらない。皆でやってよかったと思っている」(笠井氏)
打ち合わせなどで外出する機会が少ないため、一般所員には共用のiPhone 5を用意するだけで1人1台は貸与していないが、将来的には全員への支給も考えている。そうなれば会社として全員に連絡手段を貸与することになり、当初の主目的の1つだったBCPについても1つの目途が付く。
iPhone 5の使い方に関する情報共有が盛んに行われるなか、業務に貢献するアプリも次々と発掘されているそうだ。例えば、角度を変えて撮影した多数の写真から3Dモデルを作成できるアプリ「123D Catch」。設計の仕事では、模型を使って具体的なイメージをクライアントに伝えることがよくある。この123D Catchを利用すれば、大きな模型を苦労して持ち運ばなくても、iPhoneにより立体でのイメージを伝えられる。
3Dモデルを作成できる「123D Catch」のデモイメージ。建築模型を撮影し、クライアントに見てもらうといった使い方を考えているという |
また、ビデオ通話アプリの「FaceTime」を使って、建設現場で気になった箇所をオフィスにいる同僚に映像で見せながら話し合うことも可能になる。さらに、様々な建築資材のカタログを電子化し、クラウド上に置いて活用することも考えている。
「iPhoneの一番の良さはやはりアプリだと気付き始めた」という笠井氏。そこで、所員がアプリを紹介し合う「自慢のアプリ合戦」のような場作りも構想中だという。
KDDIが提供するビジネス向けクラウドアプリのパッケージ「ベーシックパック」も利用。リモートワイプなどの機能を備えたスマートデバイス管理サービス「KDDI Smart Mobile Safety Manager」やリモートアクセスサービス「KDDI Flex Remote Access」を活用している。写真はiPhone 5から社内のグループウェアにアクセスしているところ。リモートアクセスの導入により、外出先からもスケジューラや掲示板などを見れるようになった |
このようにiPhone 5というワークスタイル変革のための強力な武器を手に入れた佐藤総合計画。さらに今、iPadの導入計画も具体化しつつある。設計図面や模型の立体イメージをクライアントに見てもらうなどの用途には、iPadのほうがさらに効果的だからだ。
佐藤総合計画の働き方改革への取り組みのキーワードは「ボトムアップ」である。若手所員の提言を受けてフィーチャーフォンからスマートフォンへ方針転換したのが良い例だが、時間がかかっても「皆で考えて意見を出し合い、それを会社が認めていく」というのが佐藤総合計画流。ボトムアップにこだわるのは、働き方を本当に変えるためには所員1人ひとりの納得が大事だと考えているためだ。笠井氏は「ハラオチ」(腹に落ちるの意)と表現する。
ワークスタイル変革の取り組みは多くの企業で進行中だが、残念ながら単なる掛け声にとどまっているケースも少なくないだろう。しかし、全員が深く納得して臨むことができれば、確実に働き方は変わっていくはずだ。