(2)TCPの最適化
2つめのWAN高速化技術は、TCPの最適化だ。多くのアプリケーションに利用されているTCPは、確実にデータをやりとりするため、一定サイズのデータを送るたびに、データがちゃんと届いたかどうかの確認作業を行う。つまり、受信の確認が届かないと次のデータを送信できない。
このデータ送信から受信確認までの一連のやりとりに必要な時間のことは、一般的に「RTT(Round Trip Time:往復遅延時間)」と呼ばれている。また、確認なしに1回に送信できるデータのサイズのことは「ウィンドウサイズ」という。
図表4 TCPのデータ送受信の手順 |
WANの帯域を広げても期待通りにパフォーマンスが改善されないのは、伝送距離が長くなるほどデータを送信していない“待ち時間”が増幅するからである。
そこでWAN高速化装置には、TCPをWANでの利用に最適化する工夫が盛り込まれている。Steelheadの場合、まずウィンドウサイズの拡張を行う。ウィンドウサイズを100KB超に拡張することで、1回の受信確認により送信できるデータ量を増やすのだ。その結果、応答確認のやり取り回数、つまり待ち時間そのものを削減できる。
もう1つはリファレンスの利用である。リファレンスとは、受信側でデータを再構成するための設計図のこと。データの重複排除のおかげで、WAN高速化装置を導入するとすべてのデータをWANを介して送る必要はなく、新しいデータだけで済む。そのため、その新しいデータだけを1つのパケットにまとめてリパックするとともに、受信側でキャッシュされたデータと合体して再構成するためのリファレンスを送信する。
図表5 TCPの最適化の仕組み |
(出典:リバーベッドテクノロジー) |
このウィンドウサイズの拡張とリファレンスの利用によって、「1パケットを受け取っただけで、数MBになることもある」と寺前氏は説明する。
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