台湾クラウド業界が東京でイベント 生成AIやIOWNへの取り組みなど紹介

台湾大手キャリアのIOWNへの取り組み

もう1つ、今年のCloud Computing Day Tokyoのメインテーマにとなったのが省電力化だ。

生成AIの登場を機に増大するデータセンターの電力消費への対応策が多くのセッションで提起された。

SuperMicroは電力消費を大幅に引き下げうる液体冷却方式を紹介。これによりPUE(施設の全消費電力をIT機器の消費電力で割った値)を最大40%引き下げられるとした。

Preferred Networksは、AI計算を効率化するための手法について解説した。

さらに台湾最大手の通信事業者・中華電信は、IOWNへの取り組みを説明した。

中華電信 クラウド コンピューティング ラボ マネージング ディレクターのHong-Ren Lo氏は、生成AIの登場でデータセンターの電力消費が急増し、IEA(国際エネルギー機関)が今年2月に発表したレポートでは、世界中のデータセンターで消費される電力が2026年には2023年の2倍以上、日本の電力消費量に匹敵する1兆kwhに達する可能性があると報告されていることを紹介。すでに「大規模データセンターの新設が政府から拒否されるといった事案が出てきており、小規模なデータセンターを様々な場所に分散して設置する手法が検討されるようになってきている」と語った。

中華電信では、この問題の有力な解決策となり得るIOWNの実用化に力を入れており、今年8月にはNTTと世界初となるAPN国際回線を日台間で開設している。

中華電信は、IOWNの実用化に向けて、様々なPoCも実施している。

その1つが、IOWN Global Forumが策定したオール光ネットワーク仕様Open APNの検証だ。約300km離れた台湾の北部と南部のデータセンターをOpen APNによる光ネットワークで接続し、機能・性能、マルチベンダーでの運用性などを検証。今後、既存の光伝送ネットワークをAPNと統合する方法の評価も行う計画だ。

また、IOWN APNの高速・低遅延という特徴を活かした新たなICT基盤「DCI(Data Centric Infrastructure)」の評価も実施している。

例えば、データセンターのサーバーのメモリー間で直接データをやり取りするRDMA(Remote Direct Memory Access)をAPN上で行う技術仕様、RDMA over Open APNの検証では、データセンター間でのVM移行を想定した通信にRDMAを用いることで、TCPよりもスループットが19倍、遅延が約10分の1となり、消費電力を80%低減できたという。

中華電信 クラウド コンピューティング ラボ マネージング ディレクター Hong-Ren Lo氏

中華電信 クラウド コンピューティング ラボ マネージング ディレクター Hong-Ren Lo氏

続いて行われたNTTのセッションでは、IOWN 総合プロダクトデザインセンタ担当課長の渡辺浩二氏が、DCIの最新の開発状況を説明した。

現時点での光電融合デバイスを用いたDCIによるネットワークの検証では、消費電力を昼間(高トラフィック環境)で62.8%、夜間(低トラフィック環境)では74.5%削減できたという。技術開発が進めば、さらに大きなエネルギー削減効果が得られるとのこと。

IOWNが、データセンターの消費電力問題を解決する切り札になる可能性がありそうだ。

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