次の一手は「光アンプ」の統合 RONアーキテクチャの運用拡大と新サービスの創出へ
その次の一手の1つが、光アンプのルーターへの統合だ。
光信号は、伝送距離が長くなるほど減衰する。また、ダークファイバーの品質にはばらつきがある。安定した光伝送を実現するうえで、光信号を増幅する光アンプの役割は重要だ。
光アンプの機能も光伝送装置からディスアグリゲーションして、ルーターに搭載できるプラガブルサイズにできれば、トランスポンダーのとき以上に大きな省電力・省スペース効果が期待できるが、それを実現するのがシスコの「Pluggable Optical Line System(OLS)」である。
これをルーターに挿せば、光アンプの機能をルーターに搭載でき、また、光アンプ専用の機器では概ね100〜150W必要な電力をわずか4W程度に低下でき、よりサステナブルなネットワークの構築に寄与する(図表1)。
図表1 Pluggable OLSでさらに進化するIPと光伝送の統合
運用も簡素化できる。「トランスポンダーと光アンプ、ルーターといった複数の箱をそれぞれ監視する必要はなく、ルーターにログインするだけで、すべての状態を確認できます」(児玉氏)
Pluggable OLSは現在、最大400GbpsをサポートするQSFP-DDポートに対応しているが、シスコはさらなる次の一手として100GbpsのQSFP-28ポートへの対応も検討している。これが実現すれば、QSFP-28ポートのルーターで構成されているネットワークにもPluggable OLSを適用できるようになり、より幅広い領域で、RONアーキテクチャによるIPと光伝送の統合を推し進められるようになる。
エンドユーザーとつなぐアクセス網もIP・光伝送統合へ
例えば、シスコが見据えるのは、商業ビルや集合住宅、スタジアムなど、エンドユーザーサイトとキャリアサイトをつなぐアクセスネットワークへのRONアーキテクチャの適用だ。
従来のモデルでは、キャリアサイトに置かれた光伝送装置とルーターのセットでもって、IP通信によりユーザーサイトとつないでいた。この場合、最も大容量かつ低遅延な光通信でつながるのは、従来モデルにおいてはキャリアサイト間となる。
しかしRONアーキテクチャでは、エンドユーザー側に設置するルーターにコヒーレント光トランシーバーとPluggable OLSを搭載することで、IPへの変換なしに、ユーザーサイトとの間でダイレクトに光伝送を行うことができる。大容量・低遅延の通信サービスをエンドユーザーサイトから直接提供可能になるということだ(図表2)。「オペレーションコストを下げられるだけでなく、新しいサービスを創出し、レベニューを増やしていけることもポイントです」と児玉氏は強調する。
図表2 RONアーキテクチャによって広がる新サービスの可能性
もちろん、従来のアーキテクチャがまったく不要になるわけではない。超長距離のロングホール接続などの領域では、より高機能な光伝送装置とルーターの組み合わせが引き続き活用されるだろう。だが、その同じアーキテクチャをメトロやアクセスといった、あまり距離の長くない領域に当てはめてもオーバースペックだ。より適切な選択肢がRONである。
「重要なのは、お客様に新しい選択肢を提供できることです。ルーターの世界には、コア向けのシャーシ型もあれば、アクセスおよびメトロ向けのコンパクトなボックス型もあり、要件に合わせて選択できます。RONによって、光伝送の世界でも同じように適材適所で選んでいただける時代が到来しています」と児玉氏は語った。
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